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正月の風物詩である箱根駅伝。今年も青山学院大学が大会新記録で3年連続9回目の総合優勝を達成し幕を閉じた。テレビの前で声援を送りながら、多くの人がこう思うはずだ。

青山学院大学陸上競技部は、なぜこれほどまでに勝ち続けられるのか。

箱根駅伝という、日本中が正月に見守る大舞台で、何度も頂点に立つ。この「勝ち続ける」という現象は、冷静に考えれば、よい意味でかなり異常だ。

駅伝は不確定要素の集合体だ。ケガ、体調、インフルエンザ、気温、風向き、当日の路面状況、区間エントリーの読み合い、他校の戦術、どれか一つ歯車が狂えば、総合優勝は遠のく。だからこそ多くの強豪校はどこかで崩れる。

それなのに青学は崩れない。この再現性を、人はつい「カリスマ」「勢い」「チームの雰囲気」といった言葉で説明しがちだ。しかし、それだけで10年以上にわたる安定した強さを説明するのは難しい。

そこには青学を率いる原晋監督の、根性論でも偶然でもない「再現性を生む思考設計」が存在していると筆者は考えている。

本稿では、自身もIQ185のメンサ会員であり、IQを伸ばすトレーニングを提供している筆者の立場から、原晋監督のリーダーシップを “精神論”ではなく“IQ=変化のパターンを見抜き、その先を予測する力”という視点から読み解いてみたい。

IQは本質的に「未知の問題への対応力」を表している。未知の問題を解くためには、過去の知識量よりも、「情報の変化や規則性(パターン)を見抜く力」と「そこから次に起こることを予測する力」が不可欠となる。

■なぜ原晋だけが「勝ちの型」を持てたのか?
ここでいうIQとは、テストの点数ではない。

「IQ=変化のパターンを見抜き、その先を予測する力

この定義で見直すと、原監督の強さは精神論ではなく「構造」に支えられていることが見えてくる。

勝負の世界で重要なのは、当日の気合いではない。「どういう展開になりやすいか」を事前に描き、その確率を高め続けることだ。

原監督の著書『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(アスコム)によれば、監督は選手個々の能力だけでなく、区間ごとの特性、コースの癖、過去大会の流れ、他校の傾向といった要素を組み合わせ、「起こりうる未来」をいくつも想定するという。

つまり彼は、偶然に期待しない。偶然が入り込む余地を、少しずつ削っていく。これこそが、青学が“勝ち続ける型”を持てた理由ではないだろうか。

箱根駅伝で3連覇を成し遂げた2017年、原監督は大学院に入学している。成功体験をそのまま繰り返すのではなく、一度分解し、再現可能な型として再構築している点も特筆に値する。

自らの指導法が偶然ではなく必然であることを学術的に検証した。その結果、現場で培ってきた手法の多くが心理学や組織論などの理論と一致していることを確認し、感覚を確信へと変えていったのである。

環境が変化しても勝ち続けられるのは、結果ではなく構造を捉えているからだ。このプロセスこそ誰にでもできることではなく、高いIQの持ち主であることの一端だと言える。

■「熱血」の裏にある、冷静すぎる思考
テレビで見る原監督は明るく、軽快で、言葉もユニークだ。しかし、その印象とは裏腹に、現場では非常に冷静である。走行データ、ラップ、心拍数、体重の変化、睡眠時間。感覚ではなく、数字を積み重ねる。特に象徴的なのが、故障者の少なさだ。約40人規模の部員を抱えながら、長期離脱する選手が極端に少ない。これは偶然ではなく、徹底した管理の結果だろう。

論理的な人は冷たい。そう思われがちだが、原監督は違う。たとえば作戦会議でも、一方的に命じるのではなく、「なぜこの走り方がベストだと思う?」「もし前が飛ばしたらどうなる?」と問いを投げかける。

これは優しさではない。選手自身に考えさせ、構造を理解させるための技術だ。自分で答えを出したものは、崩れにくい。

ここで重要なのが、IQとEQは対立しないという点だ。

IQ=見抜く力(パターンを読む力)
EQ=伝える力(納得させる力)

高いIQで見抜き、高いEQで届ける。この両輪が噛み合っているからこそ、青学はプレッシャーの中でも統制を失わない。

■偶然を排除する「なぜだろう?」の仕組み
駅伝は、流れのスポーツである。一人が想定外の走りをすれば、全体が崩れる。しかし青学は、想定外を減らす努力を続けている。

その象徴が、原監督の口癖だ。「なぜだろう?」勝った日でも、必ず振り返る。なぜうまくいったのか。なぜ差が開いたのか。そして日常の練習でも、なぜこの区間で失速した?風向きが変わったらどうなる?ライバルが仕掛けたら何分差がつく?まず予測する。すぐに正解を探さない。まず自分の仮説を立てる。その後で答え合わせをする。このプロセスを繰り返すと、脳に「予測回路」ができる。本番で想定外が起きても、それは“未知”ではなく“想定の一つ”になる。

実際、出遅れたレースでも青学は動揺しない。なぜなら「もしこうなったらこうする」という準備があるからだ。偶然はゼロにできない。しかし、確率は下げられる。その積み重ねが、優勝の確率を押し上げる。勝利は奇跡ではなく、偶然を削り続けた結果なのである。

■リーダーシップは才能ではなく「型」である
「理屈だけで人は動かない」とよく言われる。だが青学を見ると、その前提が揺らぐ。原晋監督が提唱する「陸上選手は修行僧ではありません」という哲学と、「チャラい」という言葉を肯定的に捉える姿勢の中に、外見や表現の自由を認める考え方が明確に示されています。

一見すると自由奔放だ。しかし内部は、驚くほど設計されている。目標は明確。役割は明確。データは共有される。外見は自由。中身は厳密。感情は解放し、構造は締める。だから「自由」でも崩れない。

原監督は自らを「凡人監督」と呼ぶ。名選手ではなかったからこそ、どうすれば勝てるかを構造的に考え続けた。特別な才能ではない。積み重ねた思考の型だ。変化を読む。先を予測する。偶然を削る。納得させる。この反復が、あの安定感を生む。

青学の強さは、感動的な物語であると同時に、冷静な技術の物語でもある。「勝ち続ける」という異常事態の裏には、静かで、地道で、そして極めて合理的な知性がある。それが、原晋監督の正体なのではないだろうか。

不確実性が支配する現代において、精神論だけでは勝ち続けられない。知性を“鍛えられる技術”として捉え直すことこそが、次の時代の競争力になる。私はその必要性を強調したい。

出典:『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(原晋 アスコム)


秋谷光輝 JAPANMENSA会員 


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■プロフィール 秋谷光輝 JAPANMENSA会員
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1974年生まれ、IQトレーニング講座「ExpIQ」(エクスピーク)主催。ソニー株式会社にて16年間エンジニアとしてオーディオ設計に携わる。小学校4年生で受けた全国一斉知能テストが全国1位(180万人中)だったことを知り思考法が特異であることに気づく。数学の偏差値は104を記録。心身の不調をきっかけに「モノづくりからヒトづくり」へ転身。大手企業での研修実績、雑誌、新聞などでの掲載多数。一般財団法人高IQ者支援機構にてIQ185(sd24)を認定される。
著書:「楽算メソッド」(合同フォレスト)、「今から伸ばす!IQトレーニング」(大創出版)「記憶の出し入れがスムーズになる衰え知らずの脳トレ習慣」(日本実業出版社)(2025.12)

公式サイト https://www.housokugaku.com/

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