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■連休明け、オフィスに現れない新入社員
まもなく訪れるGWを前に浮き足だっている社会人は少なくないだろう。GWは多くの社会人にとって、日頃の忙しさから解き放たれてリフレッシュできる、束の間の充電期間である。当然、企業もそのように考えている。しかし、GW明けは新入社員の離職や転職意識が高まりやすい時期でもある。

株式会社マイナビの調査によると、GW明けにモチベーションが低下する20代は73.5%。転職検討中または転職経験者のうち、「五月病」が原因で転職したことがある20代は35.2%に及び、20代~50代の各年代の中で最多である。
(参考:「マイナビ 中途採用・転職活動の定点調査(2025年1-3月)」を発表 株式会社マイナビ 2025/05/01)

多くの若者にとって、GWで心身が休まることと、仕事への意欲が高まることは別問題だ。売り手市場かつ転職が当たり前の時代に、第2新卒というカードを持つ若者の早期離職に対するハードルは低い。だからこそ、GW明け離職を、「最近の若者は忍耐力がない」「甘えている」と、離職した本人に原因を帰属させることで片付けている企業は危うい。

はたして、GW明け離職は「甘え」なのだろうか。私は、GW明け離職について、個人の問題ではなく組織の問題として捉え直すことが必要だと考えている。

■なぜリフレッシュのはずの休暇が「決別」の場になるのか
4月のこの時期、新入社員は、研修で新しい知識を学び、慣れない環境で緊張にさらされ、目の前のことに精一杯になりながら社会人生活を送っている。

GWはそんな環境から一時的に解き放たれ、自身の仕事内容や待遇を冷静に周囲と比較し見つめ直すことで、ひそかな絶望が生まれる時期である。

現代において、その比較は対面の場だけではなく、SNS上でも行われる。必然的に、SNSでキラキラ働く友人と、泥臭い研修に励む自分という現代特有の比較がなされることになる。だからこそ、「私はこんなに苦労しているのに、A社に入社した子たちは楽しそうだなぁ」「B社の入社式や懇親会は豪華でいいなぁ」「C社の子たちは同期や先輩とも親しそうで羨ましいなぁ」と感じる。

SNSは日常の良い部分だけを切り取っていると分かっていても、新しい環境で苦労している新入社員には、隣の芝生が青く見えやすい。

また、理想と現実のギャップ(リアリティショック)が起きるのもこの時期である。「説明会で聞いたより地味な仕事」「リクルーターの人達と比べると相談しづらい雰囲気の先輩社員」「自分自身が想像以上に仕事ができない」など、入社前に抱いていた企業や社会人生活への期待と現実とのギャップにより、「こんなはずじゃなかった!」と感じる。

冷静に考える時間ができるからこそ、周囲や自身との期待と現実のギャップが絶望や不安、迷いを生み、それが決別の引き金になるのである。

■GW明け離職を防ぐ3つの対策
ここで、企業が今からでも取り組める離職防止策を3つ紹介したい。

・選考中や内定者研修、新入社員研修で分かった本人の特性を、受け入れ側に明確に共有する
・ギャップが少なくなるように会社理解を促す
・メンター制度など「人」による介入でケアしていく

あえて言えば、これらは特別な施策というより、定着している会社が当たり前にやっていることである。

・選考中や内定者研修、新入社員研修で分かった本人の特性を、受け入れ側に明確に共有する
例えば、適性検査で挑戦心や主体性が高く評価されて入社した新入社員が、受け入れ側にその特性を共有されないまま定型業務ばかり任されると、「この会社は合わない」「当初聞いていた話と違う」と感じやすい。こうしたギャップが、モチベーション低下や早期離職の原因となる。

対して受け入れ側が新入社員の特性をよく理解していれば、定型業務を依頼する際もそれが将来の挑戦に対してどのような意味を持つのか、業務の目的を伝えることができる。このように、本人の特性と現場のミスマッチを放置しない仕組みづくりが重要である。

・ギャップが少なくなるように会社理解を促す
近年の学生は初任給や福利厚生を重視する。結果、企業もそういった働きやすさをアピールする機会が増え、企業のポジティブな面ばかりが学生に伝わりやすくなっている。

しかし仕事というものは、楽しいばかりではなく苦労や厳しさを伴うものである。だからこそ、ポジティブな面だけでなく、仕事の厳しさや壁にぶつかった時の乗り越え方、学生と社会人の違いも早い段階で伝えることが重要だ。そうすることで、入社後のギャップを小さくし、壁にぶつかっても立て直しやすくなる。

・メンター制度など「人」による介入でケアしていく
人による介入は離職防止において、相談窓口やアンケートといったシステム以上に機能する。なぜなら、人は表情や声色など、まだ表面化されていない違和感を察知し、本人の性格や時と場合に合わせたフォローができるからだ。

また、相談窓口などのシステムは、企業の監視下にあるように見え、相談のハードルを上げてしまうことがある。

対して、人による介入は、メンター自身の失敗談を先に開示するなど、相手に歩みよることで相談のハードルを下げることができる。

このように人を介することで、細やかで心理的安全が保たれる相談の場を作りやすくなる。またそういった人と人との対話を通して生まれた信頼関係や情は、数値化できない強力な離職防止策となる。

このように、なぜ辞めるのかを把握し、改善できている企業はGW明け離職を防ぐことができる。

■「代わりはいくらでもいる」と考える企業が、GW明けに失うものの正体
新入社員はお客様ではない。企業組織の一員である。だからこそ、「そこまでケアしないといけないのか?」と疑問を抱く人もいるだろう。

しかし、GW明け離職は「うちに合わなかった」「忍耐が足りない」などといった個人の問題や、「この時期は仕方がない」といった一時的な問題ではなく、組織の育成課題、特に内定がゴールになっている組織の課題が表出するタイミングである。

少子高齢化が進む現代において、新卒採用は益々厳しさを増していくだろう。だからこそ貴重な人材を「採って終わり」にするのではなく、GW明け離職を、組織の人事課題を改善する好機と捉えられる企業こそが、人材が定着し、長期的に強い組織をつくることができるのである。


河本英之 人材コンサルタント・シーズアンドグロース株式会社 代表取締役


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■プロフィール 河本英之 人材コンサルタント・シーズアンドグロース株式会社 代表取締役
kawamoto
1981年広島県生まれ。高校中退後、大検を取得し2001年に上智大学経済学部に入学、2005年に卒業。新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、採用戦略や組織人事領域に従事。企業規模を問わず500社以上の採用・育成コンサルティングを担当し、社内MVPも獲得。
2010年7月、シーズアンドグロース株式会社を設立し、代表取締役に就任。自身の「人の可能性の大きさ」を実感した経験に基づき、これまで16業界600社以上の企業の採用・育成を支援を行い、マイナビEXPOでは講師として登壇。著書に『新卒採用の常識を変える カレッジ型イベント』(金風舎)など多数。

公式サイト:https://seeds-and-growth.co.jp/
Tiktok:https://www.tiktok.com/@kawamoto_saiyo @kawamoto_saiyo

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