![]() この記事では、見落とされがちな中学受験のデメリットについて、著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■中学受験の学びは大学受験に直結しない *独自進化を遂げる中学受験の弊害 中学受験で出題される問題には、小学校では習うことのない、学習塾でしか教えてくれない内容にまで範囲が及んでいます。 その理由は、小学校で習う内容は基本中の基本の範囲のため、それらを材料にして問題をつくっても、平易なものにしかならないからです。中学受験にチャレンジできるだけのスペックを有する子たちに、小学校の範囲だけでつくった問題を出しても、誰もが高得点を取れてしまいます。これでは能力の序列をつけることができず、合否の選別ができません。 そこで学校で習う範囲を飛び出して問題を作成するのです。理科や社会は暗記項目が増えますし、国語も学校では習わない語句や表現が連発するようになります。 極め付けはやはり算数でしょう。中学受験に出てくる算数は、つるかめ算や旅人算やニュートン算など、中学受験用に編み出された、特殊な計算方法を使って解く問題のオンパレードです。中学以降の数学とは異なり、独自の進化を遂げているといっていいでしょう。このような、学校では教えてくれない特殊な問題をたくさん出すことで、受験生を採点評価し、選別を行っています。 こういった選別法で合格者を決める中学受験の最大の懸念点は、これら小学校の範囲を飛び出して出題される問題の多くが、中学以降にほぼ使わなくなることです。 国語はそのようなことはありませんが、たとえば理科であれば化学や生物で暗記した項目は、中学以降では使わない単元も多々あります。とくに文系に進む人にとっては、理科で暗記したことをほとんど使わないままということになるでしょう。社会の場合も、理系に進む人にとってはまた然りです。 そして算数は、数学という発展学問の登場とともにまったく違った解法で問題を解いていくことになります。中学以降、つるかめ算など中学受験専用の独自単元は、計算の基礎としては役立っても、その解法や思考過程はほとんど役立たなくなるのです。 しかも、大学の一般入試においては私立文系なら数学を使わないこともあります。この事実を知ると非常に遠回りした気分にならないでしょうか。中学受験のためにせっせと塾に通って習ったものたちが、ほとんど無駄になってしまうということなのですから。 タイパやコスパの観点から考えると、とくに強い懸念を感じてしまいます。中学受験は大学受験に向いている子どもを選別する役割はあるでしょうが、中学受験の問題が独特すぎて、培われた力が大学受験では活かしにくいという点が挙げられるわけです。 ■進学後のリスクを無視してはいけない *中学受験組は推薦が取りづらい 中学受験組が大学の指定校推薦を取ることがなかなか難しい場合もあります。これも中学受験のリスクのひとつです。 理由は明白で、自分の能力よりもレベルの高い中高一貫校に入ったがために、定期テストで高い評価を得ることが困難となり、推薦を取るための基準を満たせない可能性が高いからです。 中学以降の記憶力や持続力の成長が芳しくなく、一般受験に対応する力の伸びが低かった子にとっては、この現実は残酷なものとなるでしょう。 ただし大学付属の中高一貫校に関してはこの限りではありません。一般入試で受かる能力がなくても、大学にエスカレーター式で内部進学できる「救済措置」が用意されているものです。とはいえ進学するには一定の条件があり、対策は必要になります。 また進学のための独自の共通試験を用意している付属校もあります。中学受験だけが得意で中学以降に伸びなかったタイプの子には厳しいハードルとなってしまうこともあります。 中高で思うような成績をあげられなかった子は、なんとか内部進学できたとしても、希望とは程遠い学部に所属することになってしまうのもよく聞く話です。大学進学後はやる気がまったく起きず、留年を繰り返してしまい、最悪の場合は退学することも。経歴に傷がついてしまうことになります。そうなってしまったら、タイパ・コスパ・リスパ、すべての面で最悪です。 記憶力や持続力の伸びが足りなかった場合は、指定校推薦や公募推薦などの道が閉ざされてしまいます。子どもの自信をなくさせ、希望する道を閉ざしてしまうリスクをはらんでいます。 私立中学校に合格したはいいものの、思うように芽が出ず苦しんでいるようであれば、固執せずに公立中学校へ転校するのもひとつの手です。子どもは伸び伸びと学校生活を楽しみながら、周りのレベルが下がったことで好成績も取れるようになることでしょう。中学受験にかけた時間やお金がもったいない気もしますが、将来的にはそのほうがいい大学へ進学できる期待値は高まり、リスパを高めることができるはずです。 ■総合的に見てから中学受験の是非を 中学受験は子どもの将来を左右する重要な選択です。そして中学受験には、燃え尽き症候群や経済的負担、先取り学習の不適合、レベルの高い環境におけるプレッシャーなど、多くのリスクが潜んでいます。 そもそも中学受験に向いている家庭の条件を満たせているか、リスクを覚悟して挑戦するべきか、何度も確認するべきです。公立中学校からでもいい大学へ進学できるケースはたくさんあります。そのほうが、3つのパフォーマンスの面で極めて優れているかもしれません。これらも含めて、総合的に見てから、中学受験の是非を決めましょう。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■中高一貫の先取り学習で燃え尽きる子たち―数学と英語「1.5倍速」の落とし穴 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/63175689-20260429.html ■受験最大のリスクは、終わった後にやってくる。子どもを「再起不能」にしないための親の心得 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62989301-20260206.html ■本当に中学受験すべき家庭は実は少ない?参入できる3つの前提条件とは (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62989284-20260206.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


