![]() この記事では、中学受験ではなく、あえて公立中学から高校へ進み大学受験に挑戦するメリットについて、著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■高校受験は大学受験の基礎になる *無駄のない受験戦略 中学受験は算数を中心に独自の特殊な内容が採用されていて、これらの多くは中学や高校の勉強では役立ちません。これに対して、高校受験で習う内容は、その大部分が高校でも大いに活用でき、大学受験の礎にもなっています。 もちろん上位の難関高校になると、応用力や発想力が問われる問題も多数出題されますが、これらを解くカギもまた、中学校で習う範囲をベースとしています。学習塾に通っている受験生にしか解けないような、受験専用に編み出された特殊な問題に出くわすことはまずありません。 中学受験には専用のテキストや対策塾が必須でしたが、高校受験は、中学校の授業と配布教材だけでも、十分にカバーできるわけです。自身でルールを設けて学習管理できる子どもなら、学校の授業と自学自習だけでも、上位の高校を狙うことが不可能ではありません。 普段の授業を真面目に受け勉強し、定期テストで結果を出していれば、一般受験力の向上に加えて、推薦のための内申点も上げていくことができます。 中学受験と比べると、非常にタイパの優れた話ではないでしょうか。部活動や学校行事や友達との遊び時間を確保しながら、ライフと学びのバランスを保ちつつ高校受験に取り組むことができるのです。 推薦入試なら私立高校の単願推薦がコスパとタイパが高いですが、大学一般受験も見据えるなら、私立高校のフリー受験と呼ばれる3科目受験や公立高校の5科目受験の一般入試を視野に入れた受験対策もいいでしょう。 多様な受験方式が選べる高校受験ですが、学んだことが基礎として活かしやすいのです。 ■中学受験組が抜けた高校受験戦争のほうが楽 *東京では4人に1人が私立中学へ行く 小学校時代では学力トップクラスのエース級が中学受験をします。彼らは中学受験を経て私立の中学校へ進学するため、公立中学で同級生となることはありません。 彼らエースがいなくなることで、相対的に好成績を取りやすくなります。したがって、中学受験よりも高校受験のほうが、競争率は軟化すると考えることができます。 文部科学省の「学校基本調査」によれば、2024年度の中学校生徒数は約314万人。前年度より約3.6万人減少しています。このうち、私立中学校に通う生徒は中学生全体の約7.9%。地域によって差があり、東京を筆頭に、高知・京都・奈良・神奈川・広島などが、私立中学生が高い傾向にあります。 東京はじつに26.3%の中学生が私立中学校に通っています。およそ4人に1人の割合です。しかし実際に東京に住んでいると、このデータがピンとこない人もいることでしょう。東京の中でもさらに地域差があって、裕福層の多い区とそうでない区でも割合が異なっています。 東京だけでみると、全体のおよそ4分の1のエースたちが私立中学へ進み、残りの4分の3で公立中学校では成績争いが行われます。全体のレベルは下がるわけで、相対的に個々の評価が上がることは明らかなのです。小学校時代は受験組に隠れてさほど成績面で目立っていなかった子も、中学になって大きく飛躍する可能性は十分にあります。 コスパの面でも高校受験は楽です。中学受験では中学受験塾への課金が必須ですが、これは学校の授業だけでは、独自の問題が出る中学受験がままならないからです。この点、高校受験では経済的に余裕がない家庭でも現実的な範囲で、希望の高校を目指した十分な受験対策を行うことができます。 ただし、大学進学で指定校推薦を目指している場合は特に、高校はそこまで偏差値の高いところを目指す必要はありません。必要以上に高い高校へ進学してしまうと、周りのレベルも上がってしまい、良い成績が取りにくくなってしまうからです。 いい高校に入ることではなく、その先にある本人の希望するいい大学に入ることが目的です。そのためにどういった高校に入るのが最良の手段になるのか。その視点だけは忘れないようにしましょう。 ■大学の指定校推薦が取りやすくなっている *「棚ぼた」にありつけることも 以前よりも、推薦による大学進学のうまみが増えています。各高校は大学の指定校推薦枠をもっています。よくよく調べてみると、偏差値的には中堅かそれ以下であっても、有名大学の推薦枠をもつ穴場高校を見つけることができます。 少子化一辺倒の日本ですが、不思議と指定校推薦の枠が絞られるようなことはありません。それどころか増加の兆しもあるほどです。これには少子化ゆえの大学側の裏事情がうかがえます。つまり、一般入試よりも前に、入学を確約できる優れた学生をできるだけ集めたいという意図があるのでしょう。 私たち親世代の感覚だと、有名大学への指定校推薦枠をゲットできるのは、校内でも一握りの優秀な生徒、という先入観が強くあります。高校サイドとしては、推薦枠に志願する生徒がいなかったからといって有名大学サイドに「今年は推薦枠の志願者はいませんでした」とはいえません。そんなことを報告しようものなら、次年度以降の推薦枠を外されてしまうかもしれないからです。そこでふさわしい生徒へ「○大学の枠が空いているんだけどどう?」と、高校サイドから声をかけるケースもあるそうです。 一般入試では決して受かることのできない高嶺の花だった大学が、推薦枠に偶然飛び込め受かってしまった。そういった「棚からぼたもち」のような例も稀ではなくなってきました。 このような大学や高校側の事情によって織り成される受験市場は、家庭からみれば「少子化なのに指定校推薦の枠は多い=枠の競争率は下がっている」ととらえることができます。このメリットに乗らない手はないでしょう。 子ども自身が行きたい高校に行かせるのは念頭に置いておくものの、できるだけ好成績を残せる、つまり大学受験では指定校推薦の枠を狙っていける高校に目星をつけることを推奨します。 指定校推薦で大学進学が決まれば、これほどコスパの優れた話はありません。一般入試になると複数の大学を受けたり、本命の大学受験前に、滑り止めの大学に保険として入学金を支払ったりなど、何かとコストが嵩んでしまいます。コスパだけでなく、一般入試の対策もしなくていいのでタイパも良いですし、ほぼ確実に合格できるためリスパも高いといえます。 高校は私立単願推薦、大学では指定校推薦で決められれば、一般入試前の早い時期に受験が終わるので最良です。指定校推薦を意識した受験戦略を逆算的に考えていくと、中学や高校での過ごし方も自ずと見えてくることでしょう。 ただし、高校受験にしろ大学受験にしろ、推薦で進学していくことにも弱点があります。入学するまでの4ヶ月を遊び呆けてしまい、その間に一般入試の受験生たちと学力差がついてしまうリスクをはらんでいることです。 高校に推薦入学した生徒が一般入試で入学した生徒よりも成績がよくないケースをよく耳にしますが、専願は併願優遇やフリー受験に比べると、学力が低くくても入学できてしまうだけではなく、この4ヶ月間の過ごしかたにも起因しているといっていいでしょう。受験生ほど根を詰める必要はないものの気を緩めないよう、高校に向けて英語や数学を勉強するなど、周りのサポートは欠かせません。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■中学受験の学びは大学受験に直結しない―「独自進化」した試験の弊害 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/63176337-20260429.html ■中高一貫の先取り学習で燃え尽きる子たち―数学と英語「1.5倍速」の落とし穴 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/63175689-20260429.html ■受験最大のリスクは、終わった後にやってくる。子どもを「再起不能」にしないための親の心得 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62989301-20260206.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


