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「体が重くて起きられない」「頭がボーっとして働かない」。ゴールデンウィークが明け、今朝もアラームを何度も止めながら布団の中でこうため息をついていませんか?

「またサボり癖が出てしまった」「自分はなんて意志が弱いんだ」と自分を責める必要はありません。今、あなたがそうした状態にあるのなら、それは意志の力ではどうにもならない領域で、脳が「これ以上の稼働を拒否」している状態です。

これは怠慢ではなく、脳の回路を守るための「安全な強制終了」なのです。無理に再起動をかけようとせず、まずはその状態をそのまま受け入れることが、結果として最も早い回復への道となります。

この強烈な倦怠感の背後では、脳に何が起きているのでしょうか? 精神科医の立場からこのメカニズムを解き明かし、無理なくシステムを復旧させるための具体的なアクションをお伝えします。

■4月に消費し尽くした、脳のエネルギー資源
なぜ、今これほどまでに動けないのでしょうか。

4月の新年度、私たちは新しい環境や人間関係に適応するため、脳の司令塔である「前頭前野」で異常なほどのエネルギーを消費してきました。脳内では、周囲を警戒し、膨大な情報を処理するシステムがフル回転し続けていたのです。

連休で一度その回転が止まったとき、脳はこう判断しました。
「エネルギー残量が枯渇している。これ以上の負荷は回復不能なダメージを招く」と。

今、あなたが感じている強烈な倦怠感は、脳があなたにこれ以上のダメージを与えないためにかけた、非常に強力なプロテクト(緊急シャットダウン)です。動けないのは、あなたの脳が「正しく危機を察知している」からに他なりません。

■19兆円の損失を招く「無理な再起動」の罠
「そうはいっても仕事は山積みだし、気合で乗り切るしかない」と考える人もいるでしょう。しかし、心身が限界を超えているのに無理に仕事を続けようとすることは、かえって回復を遅らせます。

この、心身の不調によりパフォーマンスが十分発揮できない状態で出勤、働くことを「プレゼンティーズム」と言います。厚生労働省労働保険局の資料から試算すると、「プレゼンティーズム」による日本全体の経済損失は年間約19兆円にものぼります。(参考:厚生労働省労働保険局 データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン 平成29年7月)。

さらに、動けないからといって、仕事中にスマホの通知をチラチラ見ていませんか?

作業中に一度でも中断が入ると、元の集中状態に戻るまでに「平均23分」もかかると言われています(※1)。

ただでさえシャットダウン中で弱っている脳にとって、スマホからの膨大な情報はさらにエネルギーを奪うノイズとなり、修復を著しく妨げてしまいます。

■システムを静観し、フリーズを解除する3つの手順
では、このフリーズ状態を少しずつ解除したいのであれば、どうすればいいのでしょうか。

カナダのカールトン大学の調査では、「完璧主義的傾向が強いほど、先延ばしの頻度が高くなる」という結果が出ています(※2)。

「成し遂げよう」「頑張らなければ」というプレッシャー自体が、今の脳にとっては回避すべき過剰な負荷なのです。

今は感情や意志を使わない「ただの作業」として、以下の3つを試してみてください。

1.情報の入力を遮断する
スマホが視界にあるだけで、脳は無意識に「通知を無視する」ためのエネルギーを浪費します。まずはスマホを視界から外し、脳が処理しなければならない情報量を減らしてエネルギーの浪費を止めましょう。

2.ハードルを「ゼロ」にする
「何かを成し遂げる」という思考を一度捨ててください。PCの前に座るだけ、あるいは資料を開くだけ。その行為に対して評価も反省も加えず、ただ「物理的に動いた」という事実だけを淡々と受け止めます。

3. 物理的な安心感だけを与える
温かい飲み物を飲む、または、静かな場所で息を最後まで吐く。脳は入力された言葉や感覚どおりに反応します。言葉や感情を介さない物理的な「温かさ」や「静けさ」は、「ここは安全だ」という安心感を脳に伝え、警戒信号を少しずつ静めてくれます。

連休明けに動けないのは、あなたがそれほどまでに4月を全力で走り抜けてきたという身体的な事実の結果です。何かを達成しようとしたり、自分を鼓舞する必要はありません。今はただ、脳という精密なシステムが脳自身の修復を終えるのを静かに待つ。それで十分なのです。

【参考】
※1 Hewlett-Packard. (2005). Infomania Study (Research conducted by Dr. Glenn Wilson at the Institute of Psychiatry, University of London).
※2 Sirois, F., & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the Priority of Short-Term Mood Regulation: Consequences for Future Self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115-127.


西川晶子 精神科専門医・産業医・医学博士・公認心理師


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■プロフィール 西川晶子 精神科専門医・産業医・医学博士・公認心理師
早稲田大学大学院(心理学修士)を修了後、外務省に入省。その後、スタンフォード大学大学院にてコミュニケーション学修士号を取得。国際協力の現場でメンタルケアの重要性を再認識したことを機に、より直接的に人を癒やす道を志して滋賀医科大学へ学士編入学。卒業後、医師となってからは、精神科医として臨床に携わり、産業医として「働く現場」の快適な環境づくりをサポートしている。現在は、認知心理学と脳科学の知見を統合し、脳への「入力情報」をかえて、コンディションを整える独自のメソッドを共同開発中。「もっと頑張りたい」とか「頑張れない」と思う人々の心の安定性と快適さを引き出し、しなやかなパフォーマンスの発揮を追求している。

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