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2026年4月23日、日経平均株価は史上初めて6万円の大台に乗せました。テレビは速報を打ち、SNSはお祭りムード一色。ところが同じ日、東証プライム市場では値上がり銘柄が340にとどまる一方、値下がり銘柄は1,188。実に全体の7〜8割の銘柄が下落していたのです。

「日経平均が上がっている=自分の株も上がっている」──その思い込みが、あなたの資産を静かに蝕んでいるかもしれません。投資助言業の現場から、この見えない落とし穴の正体を解き明かします。

■日経平均6万円突破──しかし、あなたの口座に「お祝い」は届いていますか?
2026年4月23日は、日本の株式市場にとって歴史的な1日となりました。日経平均株価が取引時間中に初めて6万円台に到達し、続く27日には終値ベースでも6万537円を記録して最高値を更新したのです。半年前には5万円だったことを考えれば、まさに異次元のスピードと言っていいでしょう。

メディアは日本経済の新時代を歌い、新NISAで投資を始めたばかりの方々も、「やはり株は上がるんだ」と胸を高鳴らせているかもしれません。

しかし、ここで立ち止まって考えてほしいのです。

あなたの証券口座を実際に開いてみてください。画面に表示された評価損益は、本当に日経平均と同じように上がっているでしょうか。

もし「あれ?」と思ったほど資産が増えていない、むしろ含み損が膨らんでいると感じたならば、あなたの直感は正しい。なぜなら、4月23日の東証プライム市場では、値上がりした銘柄はわずか340、一方、値下がりした銘柄は1,188に上り、全体の7〜8割が下落していたからです。

日経平均が歓喜に沸いたまさにその瞬間、大多数の銘柄は静かに沈んでいた。この矛盾こそが今の相場が持つ最大の落とし穴なのです。

■主役は「ごく一部の巨人」だけ──K字相場が隠す不都合な真実
なぜ、日経平均は上がっているのに大半の銘柄は下がるという奇妙な現象が起きるのか。その答えは日経平均という指数の「構造」にあります。

日経平均株価は225銘柄で構成されていますが、その計算方法は株価の高い銘柄ほど影響力が大きくなる「株価平均型」です。つまり、アドバンテストや東京エレクトロン、ファーストリテイリングといった一握りの株が大きく上昇すれば、残りの銘柄が軒並み下がっていても指数だけは上がってしまう。これが現在の日経平均のからくりです。

実際、日経平均の年初来上昇率が約20%に達する一方で、市場全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は約10%の上昇にとどまっています。TOPIXは2月につけた過去最高値をいまだ更新できていません(2026年5月1日の執筆時点)。

両者の乖離を示すNT倍率は、4月23日に一時16倍と過去最高を記録しました。歴史的には10倍から13倍で推移することが多かったこの指数が16倍に達しているという事実は、いかに今の相場が一部銘柄に偏っているかを如実に物語っています。

市場関係者の間では、この状況を「K字型相場」と呼ぶ声が広がっています。Kの字を思い浮かべてみてください。右上に伸びる線が勝ち組銘柄、右下に沈む線がそれ以外の負け組銘柄。勝ち組と負け組がはっきり分かれる二極化の構造です。

日経平均の構成銘柄だけ見ても、年初来で古河電気工業が325%という驚異的な上昇を見せる一方、イオンはマイナス37%と大幅に下落しています。同じ日経平均225銘柄に入っていても、これだけのパフォーマンス格差が生じているのです。

トヨタや任天堂、JRや日本製鉄など日本を代表する代表銘柄も値を下げています。電力料金高騰の予想やナフサ不足など実態経済悪化の影響がじわりじわりと効いています。

つまり今の日経平均は、市場全体の「健康診断」としてはもはや機能していないと言っても過言ではありません。指数の数字だけを見て相場は好調だと安心してしまうのは、体温計の数字だけ見て健康だと判断するようなもの。血液検査もレントゲンも見ていないのに大丈夫と言い切るのは、あまりにも危うい判断でしょう。

■1990年にこの世界に入った人間だからわかる、「熱狂」の正体
私は1990年に太平洋証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社しました。奇しくもそれは、バブル経済が崩壊を始めたまさにその年です。入社したときの日経平均は約3万8,000円。そこから株価は坂道を転げ落ちるように下がり続け、多くの投資家が財産を失っていく様を目の当たりにしてきました。

その後も2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックと、市場が熱狂の後に急落するパターンを何度も経験しています。35年にわたって市場の現場に立ち続けた人間として断言できるのは、相場が最も危険なのは「みんなが強気になったとき」だということです。

今の状況には、過去のバブル期と共通する危うい兆候がいくつか見受けられます。

まず、特定のテーマに資金が極端に集中している点。現在はAI・半導体がその主役ですが、2000年にはIT関連、バブル期には不動産関連がまったく同じ構図で市場を席巻していました。特定の分野だけが異常に買われ、それ以外が置き去りにされるという構造は、相場の「歪み」の典型的なサインです。

次に、指数の上昇を見て「まだ上がる」と後から参入する個人投資家が増えている点。これも過去のバブルで繰り返し見られた現象にほかなりません。日経平均が6万円を突破したニュースに刺激されて、高値圏のAI関連銘柄に飛びつく。こうした行動パターンこそ、大きな損失を被る入り口になりかねないのです。

もちろんAI・半導体セクターの業績自体は堅調であり、必ずしもバブルとは言い切れません。TSMCの旺盛な設備投資やNVIDIAの好調な業績が示すように、実需の裏付けがある成長分野であることは事実でしょう。

しかし、だからこそ注意が必要なのです。「業績がいいから大丈夫」という安心感が、バリュエーションの過熱を見落とす原因となる。そして、アドバンテストが好決算を発表して翌日に大きく売られたように、良い業績が織り込み済みとなった瞬間、株価は容赦なく反転し得るのです。

■指数を捨てて「個別銘柄」を見よ──二極化時代を生き抜く3つの視点
では、この二極化相場の中で個人投資家はどのように行動するべきなのか。私が22年の投資助言の現場経験から提案したいのは、以下の3つの視点です。

1つ目は、日経平均を自分の「成績表」にしないこと。日経平均が上がっても自分の資産は増えるとは限らないし、日経平均が下がったからといって悲観する必要もない。大切なのは、自分のポートフォリオの中身を冷静に点検し、保有銘柄1つひとつの業績やバリュエーションを確認する習慣を持つことです。指数という「平均点」に振り回されず、自分自身の「答案用紙」を直視する姿勢が求められます。

2つ目は、弱い銘柄に固執せず、強い銘柄に乗り換えること。その本質は非常にシンプルです。含み損を抱えた銘柄を「いつか戻るだろう」と持ち続けるのは、沈みかけた船にしがみつくのと同じ。たとえば規律を持って損切りし、社会のトレンドや業績の変化にあわせて、より成長が期待できる銘柄へ資金を移し替えていく。これは逃げではなく、資産を効率的に活用するための攻めの戦略にほかなりません。

3つ目は、自分の投資哲学を持つことです。日経平均が6万円を超えた今、テレビやSNSには「次はどこまで上がる」「この銘柄が来る」といった情報が溢れ返っています。しかし、他人の煽りに乗って売買するのは投資ではなく、ただのギャンブルです。自分はなぜ投資をしているのか、どの程度のリスクなら許容できるのか。この問いに明確に答えられる人だけが、K字相場の荒波の中でも冷静さを保ち、長期的に資産を育てていくことができるのです。

日経平均6万円という数字は、たしかに日本経済にとって明るいニュースでしょう。しかし、その華やかな数字の裏側で、8割近くの銘柄が値下がりしているという事実を忘れてはなりません。指数の祝祭に踊らされず、自分の目で個別銘柄を見極め、必要なら躊躇なく乗り換える。この当たり前の規律こそが、二極化の時代において最も確かな資産防衛の手段であると、私は確信しています。


藤村哲也 ライジングブル投資顧問株式会社 代表取締役


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■プロフィール 藤村哲也 ライジングブル投資顧問株式会社 代表取締役
fujimura_tetsuya
千葉県出身。横浜市立大学経営学科卒業後、1990年に太平洋証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。個人・法人の資産運用を担当し、バブル崩壊後の市場を第一線で経験する。のちに本社投資情報部でプラント・機械・IT・半導体など幅広い業種を担当し、年間数百件におよぶ企業取材を通じて成長株分析に強みを培う。1999年の台湾地震では、TSMCをはじめとする現地半導体メーカーを取材し、アジア市場リスクを日本の投資家へ発信した。
2003年にライジングブル投資顧問株式会社を設立し、代表取締役に就任。「投資を一部の富裕層の特権から、誰もが続けられる生活習慣へ」を理念に、投資助言と教育を融合した“伴走型”のビジネスモデルを追求している。創業21年を迎えた現在も、金融庁登録の投資助言・代理業として行政処分ゼロを継続。700件超の売買助言ログを公開し、“信頼を見せる投資顧問”として、投資家に寄り添った長期的な資産形成を支援している。

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