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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、「とりあえず、これ読んでおいて」という入社初日の言葉が新人を絶望させる理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「とりあえず、これ読んでおいて」――放置は歓迎の真逆の行為
想像してください。入社初日、期待と不安を抱えながらあいさつを済ませ、席に案内された新人社員の手元に置かれたのは、分厚い資料の束。そこに、次の一言が添えられます。

「とりあえず、これ読んでおいて」

それきり誰も声をかけず、周りは忙しそうに仕事に没頭しています。新人社員は何から始めればいいのか、誰に聞けばいいのかわからないまま、時間だけが過ぎていきます。

この言葉は、新人社員の心を容赦なく折ってしまう「悪魔の言葉」の代表格です。

■悪魔の言葉である理由
この一言には、「今は構う余裕がない」「自分で何とかしてほしい」という冷たさがにじみ、歓迎されているどころか、どこか厄介者のように扱われた印象を残します。歓迎とは正反対の「放置」という名の静かな拒絶といえます。

また、「とりあえず」という言葉に、新人社員への配慮のなさや準備不足が透けて見えます。「これでしばらく時間をつぶしておいて」と聞こえかねません。

もちろん、資料を読むこと自体が悪いわけではありません。会社のルールや業務の流れを把握することは大切です。問題は、「資料の渡し方」と「その後の接し方」です。

人は誰でも新しい環境では不安を抱えるものです。職場では明確な「役割」と「成果」が求められ、特に中途採用の新人社員は、「即戦力として期待されている」という重圧を感じることも少なくありません。「ここでうまくやっていけるだろうか」「前職とは違う雰囲気に馴染めるだろうか」「期待に応えられるだろうか」という不安を抱えているときに、突き放すような対応をされたら、信頼関係は築けません。

私が人材派遣の営業として働いた18年の間でも、入社初日に放置された新人社員が早期離職してしまうケースを何度も目にしてきました。彼らは口をそろえてこう話します。

「歓迎されていないと感じた」
「何をすればよいかわからず、つらかった」
「自分は必要とされていないと思った」

わずか数時間の体験が、新人社員の心に深い傷を残し、会社への不信感を生んでしまうのです。

■資料の渡し方とフォローで不安をなくす
では、どうすればよかったのでしょうか。資料を渡すな、という話ではありません。大切なのは渡し方と、その後のかかわり方です。

・声かけ例
「まずはこの資料の2ページから10ページまでを読んでください。会社の全体像がつかめると思います。30分ほどで読めるので、その後に内容を一緒に確認しましょう。小さなことでも、わからない点があれば遠慮なく聞いてくださいね」

読む範囲・目的・所要時間を具体的に示し、必ずフォローする姿勢を伝えます。「あなたに関心があります」「きちんとサポートする準備があります」というメッセージを添えることで、新人社員の安心感は大きく変わります。彼らは、上司や先輩の言葉や態度に驚くほど敏感なのです。

「体は食べたものでつくられる。心は聞いた言葉でつくられる。未来は話した言葉でつくられる」

これは、おもちゃコレクター・北原照久さんの言葉ですが、職場にも当てはまります。入社初日にかける言葉が、新人社員の心をつくり、未来への希望にも、不安にもつながっていくのです。

「とりあえず、これ読んでおいて」という何気ない一言が、あなたの職場では「悪魔の言葉」になっているかもしれません。温かい歓迎ではなく、冷たい放置のサインになっていないか、ぜひ一度振り返ってみてください。

【あなたの職場の改善ポイント】
新人社員に資料を渡す際は、「とりあえず」で済まさず、読むべき箇所、所要時間、目的、そして「いつ」「誰が」フォローするかを具体的に伝え、安心感を与えましょう。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns


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