![]() この記事では、「すぐに慣れるよ」という励ましの言葉が逆効果となり、新人を絶望させてしまう理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。 ■「すぐに慣れるよ」――無責任な励ましは不安を増幅させる 新しい環境に飛び込んだ新人社員は、会社に対する期待以上に大きな不安を抱えています。「仕事についていけるだろうか」「人間関係は大丈夫だろうか」「ここで力を発揮できるだろうか」といった不安を見せる彼らに、あなたはどんな言葉をかけますか。 「大丈夫、すぐに慣れるよ」 一見優しい励ましですが、この言葉は新人社員の不安を強める「悪魔の言葉」です。 ■悪魔の言葉である理由 「すぐに慣れるよ」には根拠がなく、曖昧で、どこか無責任に響く危険性があります。「すぐ」とはいつでしょうか。3日かもしれないし、1カ月かもしれません。環境や業務内容、性格、経験などによって、慣れるスピードは人それぞれです。それを一括りに「すぐに慣れる」と言い切るのは、新人社員が抱える不安や戸惑いに目を向けず、問題を小さく扱っているように聞こえてしまいます。 また、「すぐに慣れるよ」には、「だから自分でなんとかして」という裏のメッセージが潜んでいる印象もあります。「慣れるまで待つけれど特別なサポートはしない」と突き放されたように受け取られかねません。不安でいっぱいの新人社員にとって、この言葉は慰めになるどころか、「慣れなかったらどうしよう」と、さらなる孤独感とプレッシャーを与えてしまいます。 私がオンボーディング(新人社員の受け入れ定着)支援を行なった企業でも、入社3日目の中途採用のAさんが、繰り返される先輩からの「すぐに慣れるよ」の言葉に戸惑い、「自分だけができないのでは」と涙を浮かべていました。よかれと思ってかけた一言が、彼を追い詰めていたのです。 ■新人社員を不安にさせない3つのポイント では、新人社員にどのような言葉をかけるといいのでしょうか。大切なのは、根拠のない楽観的な言葉ではなく、「具体的なサポートの約束」を示すことです。 ・声かけ例 「最初は誰でも不安ですよね。特に稟議書(りんぎしょ)などの申請業務は前職と違うので戸惑うかもしれません。時間はかかって大丈夫です。私がサポートしますから、まずは入力の練習から一緒にやってみましょう。わからないことは何度でも聞いてくださいね」 このように、状況を具体的に示したうえで支援を約束すると、新人社員は安心し、前向きな気持ちで仕事に向かうことができます。ポイントは次の3つです。 ●「共感」 「不安ですよね」と、まず相手の気持ちを受け止め、寄り添う姿勢を示します。 ●「具体的な状況の共有」 何が難しいのか、どの程度時間がかかるのかを具体的に示すことで、新人社員は「自分だけができないわけじゃない」「時間がかかってもいいんだ」と安心できます。 ●「具体的なサポート」 「私がサポートします」「一緒にやってみましょう」「何度でも聞いてください」と、具体的なサポートを約束すると、新人社員は「助けを求めていいんだ」と感じることができます。 「すぐに慣れるよ」という言葉は、優しさのようで実は思考を停止させる言葉です。 言葉は人を励ます力にも、傷つける力にもなります。無責任な励ましは不安を増幅させるだけです。具体的な共感とサポートこそが、新人社員を支える「魔法の言葉」になります。 あなたの励ましは、本当に相手のためになっているでしょうか。 【あなたの職場の改善ポイント】 新人社員が不安を口にしたら、「すぐに慣れるよ」と一般論で片付けず、「共感」したうえで「具体的な状況の共有」を伝え、「具体的なサポート」を約束しましょう。 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士 【関連記事】 ■入社初日の「とりあえず、これ読んでおいて」が新人の心を折る理由 (瀬戸山孝之 特定社会保険労務士) https://sharescafe.net/63224165-20260521.html ■吹田市職員事件から学ぶ、経営者が知るべき"逆パワハラ"の新リスク (桐生由紀 社会保険労務士) https://sharescafe.net/63205888-20260513.html ■少年院で「肩車って何?」と尋ねられた日。演劇手法が、特性を抱える子の自発性を引き出す「更生と支援」の新しいカタチ (脚本家 葛木英) https://sharescafe.net/63170243-20260426.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】 ![]() パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。 その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。 同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。 「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。 公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



