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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、「うちはみんなそんな感じだから」という何気ない返事が新人を絶望させてしまう理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「うちはみんなそんな感じだから」――思考停止が若者の未来を奪う
新鮮な視点を持つ新人社員、特に他社での経験がある中途採用者は、職場に多くの疑問や違和感を抱きやすいものです。新鮮な視点を持っているため、職場でさまざまな疑問や違和感を抱きます。「(前職のやり方のように)この書類作成、もっと効率的にできませんか?」「この会議、本当に必要ですか?」といった提案を口にしたとき、先輩や上司からこんな返事をもらうことがあります。

「ああ、それね。うちは昔からみんなそんな感じだから」

この瞬間、新人社員のなかで改善しようという意欲が急速にしぼみます。これは組織の成長を阻害し、若者の可能性を摘む「悪魔の言葉」です。

■悪魔の言葉である理由
この言葉の問題は、現状を無条件に肯定し、改善や変化の可能性を否定している点にあります。「みんなそうだから」「昔からこうだから」という言葉は、思考停止の典型です。理由や背景を説明せず、慣習に従うことだけを求める。これは、新人社員に「(たとえ君の言うことが正しくても)黙って我々のやり方に従え」という無言の圧力をかけ、「長いものには巻かれろ」という処世術を、入社早々叩き込んでいるようなものです。

特に、20代から30代前半の若手は、非効率で理不尽なことに対して敏感です。学生時代からよりよい方法を考え、主体的に行動し、情報を駆使して効率化を図ることを学んでいます。この言葉は、そんな彼らの疑問や提案を無価値だと突きつけ、改善意欲や貢献したいという前向きな気持を根元からへし折ってしまうのです。

これは、最新のスマートフォンがあるのに、「うちは昔からガラケーでメールを打つから君もそれに合わせて」と言うようなものです。便利な機能や効率的な操作性を無視し、古い慣習に固執する環境では、「ここでは自分の力は活かせない」「この組織は変化に対応できない」と見切りをつけ、次の場所を探すのではないでしょうか。

私が研修を担当した会社でも、入社して1カ月の中途採用のBさんが、部署内の情報共有のやり方について、「前職で使っていたツールを使えば、時間短縮になるのでは?」と上司に提案していました。しかし、上司の返事は「うちは昔からこのやり方でみんな慣れているし、今さら変えるのも面倒」というものでした。Bさんは、その瞬間この会社で積極的に何かを変えようとする意欲を失い、半年後に転職しました。

彼の提案が100%正しかったかどうかは別として、「もっとよくしたい」という純粋な意欲を、上司の一言が打ち砕いたのは確かです。

■現状の理由を説明しながら、新人社員の提案にも耳を傾ける
長年続いてきたやり方や慣習にも、それなりの理由やメリットがあるでしょう。しかしそれを新人社員に伝える努力を放棄し、「みんなそうだから」の言葉だけで片付けてしまうのは、あまりにも怠慢です。そのやり方が定着した背景や現状維持のメリット・デメリットなどを丁寧に説明し、新人社員の疑問や提案に真摯に耳を傾ける姿勢が求められます。

「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があるように、新人社員の素朴な疑問や既存の枠に捉われない視点が、長年の課題を解決するヒントになるかもしれません。

・声かけ例
「なるほど、そういう見方もありますね。どうしてそう思うのかな?」
「そのやり方にはミスを防ぐダブルチェックという理由があるけれど、〇〇さんの提案にもメリットがありそうです。一度、部分的に試してみる価値はあるかもしれないね」

対話を通じて一緒に考える姿勢を示すことが、組織の活性化につながります。変化を恐れ、現状維持に安住する組織に未来はありません。「石橋を叩いて渡る」慎重さも、ときには必要ですが、叩きすぎて壊してしまっては元も子もありません。

「うちはみんなそんな感じだから」は、組織の成長を止め、若者の未来への希望をも奪いかねない「思考停止」ウイルスです。あなたの職場は、このウイルスに感染していませんか。新しい風を受け入れ、変化を恐れない柔軟な姿勢こそが、これからの時代を生き抜くためのワクチンとなります。

【あなたの職場の改善ポイント】
新人社員の疑問に対し、「昔からこうだから」と思考停止で答えるのはNG。「こういう理由があるんだ。でも、〇〇さんはどう思う?」と対話し、一緒に考える姿勢が大切です。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns




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