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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、「期待しているから、早く戦力になってね」という期待の言葉が新人を絶望させる理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「期待しているから、早く戦力になってね」――過度な期待が重圧に
新しい仲間を迎えるときの、「大いに期待しているよ!」との声かけは、相手の能力を認め、今後の活躍を願う気持ちの表れであり、一見ポジティブなメッセージに思えます。新人社員も「よし、頑張るぞ!」と意気込むかもしれません。

しかし、この希望に満ちた言葉に「だから、早く戦力になってね」が加わった途端、その響きは大きく変わります。特に、「即戦力」と期待されている中途採用者にとっては重い「悪魔の言葉」となり得るのです。

■悪魔の言葉である理由
「期待」という言葉は本来、相手の可能性を信じ、未来への希望を託す温かいものです。しかし、それが「早く結果を出して」という要求と結びつくと、途端に「プレッシャーという冷たい鎖に縛られます。新しい環境に慣れていない新人社員にとって、「早く戦力になって」という期待は、「(経験者なのに)まだ何もできない自分はダメなのでは?」「早く成果を出さないと、期待を裏切ってしまう」という焦りの種になります。強い緊張により、本来の力を発揮できなくなることもあります。

また、「早く戦力になってね」とせかすのは、種を蒔いたばかりの畑に「早く実をつけて!」と叫ぶようなものです。適切な水やり(教育)や肥料(サポート)、そして太陽の光(経験を積む時間)がなければ、豊かな実りは期待できません。

たとえ社会人経験が豊富でも、入社直後は会社の文化、業務の進め方、人間関係など、覚えることが山積みです。一つひとつを吸収し、自分のものにするためには時間が必要なのです。

ある営業会社では、中途採用の新人社員に「即戦力」として初月から高い目標を設定し、上司は毎日のように「経験者だから期待しているよ!早く結果を出してね!」とハッパをかけていました。よかれと思ってのことでも、多くがプレッシャーに耐えられず、数カ月で心を病んで辞めていきました。

期待をかけること自体が悪いわけではありません。問題は、その「かけ方」と「タイミング」、そして「期待の中身」です。相手の成長を願う期待なのか、単なる「要求」なのかを見極める必要があります。

■プレッシャーを成長に変える方法
新人社員に期待を伝えるときは、「焦らず一歩ずつ成長していってほしい」という温かいメッセージを添えましょう。そして、「早く結果を出すこと」ではなく、「成長を全力でサポートすること」を具体的に約束することが大切です。

・声かけ例
「〇〇さんのこれまでの経験やポテンシャルには、チーム一同、期待しています。でも焦らなくて大丈夫。まずは会社の雰囲気やこの会社のやり方に慣れることから始めましょう。わからないことがあれば、私やメンターのAさんがいつでもサポートします。一緒に一歩ずつ成長していきましょう」

この言葉には、未来への「期待」とともに「焦らなくていい」という安心感、「サポートするという具体的な約束が含まれています。そこで新人社員は、「期待に応えたい」「この人たちのために貢献したい」という前向きな意欲を持つのです。

「期待」は、かける側とかけられる側の間に信頼関係があってこそ、ポジティブなエネルギーを生み出します。「信は力なり」です。まだ信頼関係が十分に築けていない段階での「早く戦力になってね」という一方的な言葉は、プレッシャーにしかなりません。それは、相手の成長プロセスを無視した、押しつけの「過度な期待」という名の精神的な負荷ともいえるでしょう。

新人社員の可能性を信じ、焦らず成長を見守り、サポートする。その温かい眼差しと具体的な支援が、彼らを真の「戦力」へ、そして未来のリーダーへと育てるのです。

【あなたの職場の改善ポイント】
新人社員にすぐに結果を求めるのではなく、「あなたの〇〇という点に期待しています焦らず成長できるようサポートします」と、具体的な期待とサポート体制をセットで伝えましょう。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns




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