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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、会議後に発せられる「何か質問ありますか?」という、一見相手を気遣った言葉が新人を絶望させてしまう理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「何か質問ありますか?」――発言をためらう無言の圧力タイム
会議終了後や説明が終わった後、上司や先輩がよく口にする言葉があります。

「何か質問はありますか?」

しかし、静まり返る場で、新人社員は下を向いたままで手を挙げません。この言葉は多くの職場で繰り返されるコミュニケーションの落とし穴です。

■悪魔の言葉である理由
まだ会社の雰囲気や人間関係に慣れない入社初期段階では、大勢の前で、しかも自分より立場が上の相手に質問することは、大きなハードルとなります。特に中途採用で「経験者」として期待されている人ほど、「こんな質問をしたら馬鹿にされるかも」「みんなの時間を奪ってしまうかも」と不安がよぎり、疑問があっても声を出せません。

「何か質問ありますか?」という問いかけが漠然としている点も問題です。「今日の研修内容全体のことか」「今説明された部分だけか」「業務に関することか」と、範囲が不明で戸惑い、「特にありません」が最も無難だと感じてしまうのです。

また、質問しないことで、「私は理解できています」「私は優秀です」とアピールする心理が働くかもしれません。疑問や不安があっても、「ここで質問したら、理解力が低いと思われるかも」と考え、つい知ったかぶりをしてしまう。その結果、後になって「実は、あのときよくわかっていませんでした……」という事態を引き起こし、業務上のミスにつながるリスクを高めてしまうのです。まさに「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」を地で行くことになりかねません。

■新人が質問しやすい場とは
この問いかけは、学校の授業で先生が生徒に「わからない人、手を挙げて」と言っても、誰も手を挙げない教室の光景と同じです。挙手するのが恥ずかしい、あるいは周りの目が気になる結果、わからないまま授業が進んでしまう構造を持っているのです。

では、新人社員が萎縮せずに質問できる場とは、どういうものでしょうか。

●質問の範囲を具体的にする
質問の範囲を具体的にすると、新人社員は考えがまとまり、答えやすくなります。

・声かけ例
「今の説明で、疑問点やもう一度聞きたい点はありますか?」

●質問しやすい「空気」をつくる
問いかける側が先に自分の経験や失敗を開示するのも効果的です。完璧な先輩としてではなく、「自分も通ってきた道」を見せることで、新人社員の心理的な壁をなくします。

・声かけ例
「私が中途入社した際も、承認をもらう順番が前職と違い、理解するのに苦労しました。皆さんはどうですか?」

●すぐに答えを求めず、考える時間と「逃げ道」を用意する
すぐに質問できない場合にも配慮すると、新人社員の安心感につながります。

・声かけ例
「もし今思いつかなくても、後でAさん(メンターなど)に聞いてもらっても問題ないですよ」

■1on1の質問機会を設けると効果的
入社初日の終わりに行う「振り返り面談」や、教育係・メンターとの定期的な1on1のミーティングなど、ほかの人の目を気にしない場なら、新人社員はリラックスした状態で「この点がよくわからない」と、本音で質問しやすくなるでしょう。

「何か質問ありますか?」という問いかけは、問いかける側の意図とは裏腹に、新人社員に対して「下手に質問するな」という無言の圧力をかけているかもしれません。活発なコミュニケーションや疑問の解消を促すための言葉が、新人社員の不安や理解不足を隠蔽させ、その成長の機会を奪う「サイレント・プレッシャータイム」となるのです。

問いかけ方や場のつくり方で職場のコミュニケーションの質と、新人社員の成長スピードは大きく変わります。彼らが安心して、納得いくまで質問できる、温かい問いかけと雰囲気づくりをぜひ心がけたいものです。

【あなたの職場の改善ポイント】
新人社員に過度なプレッシャーを与えないよう「ここまでの手順について疑問点は?と具体的に聞くか、「後で個別にAさんに聞いてね」と質問しやすい方法を提示しましょう。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns




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