![]() この記事では、「誰に聞けばいいですか?」という質問に対する最悪のパスについて、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。 ■「誰でもいいよ」――「誰に聞けばいいですか?」に対する最悪のパス 新しい職場で、右も左もわからない新人社員にとって、業務中に疑問や不明点が出てくるのは当然です。勇気を出して先輩に尋ねることもあるでしょう。 「すみません、この書類の書き方について、どなたに伺えばよろしいですか?」 ところが、先輩はパソコンから目を離さずにこう答えることがあります。 「ああ、それね。別に誰でもいいよ。手が空いていそうな人に聞いてみて」 一見フラットな返事ですが、これは彼らを混乱の淵に突き落とす「悪魔の言葉」です。 ■悪魔の言葉である理由 「誰でもいいよ」という言葉は、「誰が正しいのか不明」「誰に聞けばいいか判断できない」という状態を意味します。人間関係も業務分担もまったく把握できていない新人社員は、ただ立ち尽くすしかありません。「聞いた人に迷惑をかけないか」「経験者なのにこんなこと聞いて呆れられないか」と考え込み、結局質問すること自体を諦めてしまい、自己流で進めたことで、大きなミスにつながることがあります。 例えば、初めて訪れた総合病院の受付で「眼科はどこですか?」と尋ね、「その辺の看護師さんに聞けばいいですよ」と返されたらどうでしょう。誰に声をかけるべきか、迷ってしまいますよね。それよりも、「眼科は3階です。この先の受付でお尋ねください」と明確に示してくれたほうが、圧倒的に安心できます。新人社員にとっても、必要なのはまさにこうした「明確な案内」なのです。 私が転職したての頃も苦い経験があります。隣の席の先輩に手続きの質問をしたところ「誰でもいいんじゃない? その辺の人に聞いてよ」と言われ、誰に聞けばいいのかわからず、数時間悩み、結局自己流で進めて叱責されました。あのときの孤独感と絶望感は、今でも忘れられません。 ■誰ならわかるのか、次の一歩を示す 新人社員に「誰に聞けばいいですか?」と聞かれたとき、どう答えるのがベストなのでしょうか。大切なのは、「具体的な担当者」または「次に取るべきアクション」を明確に示すことです。 ・声かけ例 「その件なら、Aさんが一番詳しいですよ。今席を外しているから、戻ってきたら声をかけてごらん」 「そのことなら、私でよければ答えられます。少し時間をもらえますか?」 「私も正確にはわからないから、一緒にリーダーのBさんに聞きに行きましょう」 「まずは隣のチームのCさんに聞いてくれますか? 違ったらまた私に声をかけてね。別の詳しい人を探しましょう」 このように、「次の一歩」を示すだけで新人社員の不安は減り、迷わず動けます。もし、担当者がわからない場合や、自分が答えられない場合でも、「誰でもいいよ」と丸投げするのは絶対に避けましょう。よく「魚の与え方ではなく、釣り方を教えよ」といわれますが、入社直後の新人社員には、まず「どの釣り堀に行けばいいか」を示すことが必要です。 「誰でもいいよ」は、一見オープンで柔軟な対応なようでいて、実は新人社員を突き放し、思考停止させる「最悪のパス」です。責任の所在を曖昧にし、彼らの不安と混乱を増幅させます。 新人社員が勇気を出して助けを求めたときは、受け取りやすい「正確なパス」を返しましょう。それこそが、信頼される先輩・上司の大切な役割ではないでしょうか。あなたのパスは、新人社員をゴールへ導いていますか。迷宮に迷い込ませていますか。 【あなたの職場の改善ポイント】 新人社員の「誰に聞けばいいですか?」に対し、「誰でもいい」は厳禁。「その件はAさんが詳しいよ」と具体的に示すか、「一緒に聞きに行こう」と次の行動を提示しましょう。 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士 【関連記事】 ■会議後の「何か質問ありますか?」は逆効果?新人が疑問を言えなくなる職場の落とし穴 (瀬戸山孝之 特定社会保険労務士) https://sharescafe.net/63228434-20260523.html ■「昔はもっと大変だった」新人の心を閉ざす“昔話マウント”の破壊力 (瀬戸山孝之 特定社会保険労務士) https://sharescafe.net/63228419-20260523.html ■「早く戦力になってね」は危険…新人の早期離職を招く“過度な期待” (瀬戸山孝之 特定社会保険労務士) https://sharescafe.net/63228372-20260523.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】 ![]() パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。 その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。 同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。 「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。 公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



