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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、新入社員の存在自体を否定してしまう致命的な初日のNG対応について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「あなたの席、まだないんだ」――存在を否定する致命的な一言
入社初日に彼らの存在そのものを根底から揺るがし、会社への期待や信頼を一瞬にして地に落とす、最も致命的といっても過言ではない一言があります。

「ごめん。ちょっとバタバタしていて、あなたの席をまだ用意できてないんだ」

信じられないことですが、これは決して稀なケースではなく、実際に多くの職場で起きている、あってはならない悲劇です。

■悪魔の言葉である理由
会社に所属し、自分の役割を果たして働くためには、まず最低限「自分の場所」が必要です。その大前提として用意されているはずの席が確保されていないという事実は、単なる準備不足を超え、「会社はあなたのことを忘れていた」「あなたは歓迎されていない」「あなたには居場所がない」という強烈な否定のメッセージとして、新人社員の心を砕きます。自分の存在価値が否定されたかのような深い絶望と屈辱を与えるのです。

入社初日に席がない新人社員は、どこに座り、何をすればいいのかわからず、宙ぶらりんのまま一日を過ごすことになります。周囲は自分のデスクで仕事をしているのに、自分だけが切り離されたような感覚は、想像以上につらく、みじめで、屈辱的な経験です。

私が以前働いていた会社でも、その悲劇が起きました。中途採用のCさんは、入社初日に、配属先マネージャーから信じられない言葉を投げかけられました。

「まだ席の準備ができていないので……とりあえず会議室で待ってもらえますか?」

Cさんは唖然とし、その日はほとんど誰とも話すことなく、一日中会議室で過ごし、翌日ようやく隅のほうに古い机と椅子が置かれただけの仮の席が用意されました。後日Cさんは、「邪魔者扱いされているようでみじめだった。期待されて入社したのに、この会社はどうなっているのかと思った」と語り、たった1カ月で別の会社へ去っていきました。

■席以外の準備も怠らないこと
次の項目も、「歓迎する準備ができていない」という否定のメッセージになります。

・パソコンが用意されていない(古くて使い物にならない)
・業務に必要なソフトウェアがインストールされていない
・アカウントが発行されていない
・名刺ができていない

特に、パソコンやアカウントがない場合、新人社員は文字どおり「何もできない」状態に置かれます。これは、彼らのやる気を奪うだけでなく、給料泥棒のような罪悪感を与えてしまうかもしれません。業務効率の観点からも大きな損失です。

新人社員を迎えるということは、新しい才能と可能性をチームに迎え入れ、未来をともにつくるための大事な日です。その初日に「働くための場所と道具」が用意されていないのは、組織としてあまりにお粗末で、プロフェッショナルとはいえません。「隗(かい)より始めよ」という言葉のとおり、まず足元の準備から整えるべきです。新人社員への受け入れ準備は、ほかの業務の「ついで」ではなく、会社の未来への投資であり、万全の体制で敬意を持って臨むべき最重要ミッションの一つです。

・声かけ例
「〇〇さん、ようこそ。席もパソコンも準備して、みんなで待っていましたよ」

この一言と整ったデスクは、どんな美辞麗句よりも雄弁に、会社の歓迎と敬意を伝えます。あなたの職場では、新しい仲間を迎えるための「場所」と「準備」は整っていますか。これは信頼関係を築くうえでの最低限の礼儀なのです。

【あなたの職場の改善ポイント】
新人の入社日は事前に把握しているので「席がない」は論外。デスク、パソコン、アカウント、名刺など、気持ちよく働ける環境を入社日までに整えることは、最低限の責務です。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns




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