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せっかく採用コストと時間をかけて迎えた人材が、短期間で辞めてしまう例は後を絶ちません。背景には、新入社員の心を折る「悪魔の言葉」があるかもしれない――そう語るのは、年間2万人の新人支援を行う組織定着コンサルタントの瀬戸山孝之氏。「良かれと思って」「つい言ってしまった」そんな何気ない言葉でも、新入社員にとっては「この会社に未来はない」という絶望に感じられる。そんなNGワードや対応とは?

この記事では、静かな職場環境が新人を絶望させてしまう理由について、氏の著書『新人社員が職場に定着する入社初日の魔法 離職を防ぐオンボーディング戦略のすすめ』(WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■「サイレントな職場」が新人社員を追い詰める
オフィスには多くの人がいるのに、聞こえるのはキーボードを打つ音と電話の呼び出し音だけ。私語はほとんどなく、みんなが黙々と作業している……。そんな静寂に包まれた「サイレントな職場」は、一見すると集中しやすい理想の環境のようです。しかし、新人社員にとっては、過度な静寂は「悪魔の職場」で恐怖そのものです。

■悪魔の対応である理由
静かで落ち着いた職場であっても、コミュニケーションが極端に少ない環境では、新人社員は「自分はここにいていいのか」「どう振る舞えば正解なのか」という疑問に対する答えを見つけられず、強烈な疎外感と孤独を感じるものです。周囲が考えていることも、職場の暗黙のルールもつかめず、透明人間になったかのような不安に襲われます。

異国の広場に一人で放り込まれ、周りの人々が談笑しているのに、誰一人として自分に話しかけてこない状況を思い浮かべてください。不安と心細さで、その場から立ち去りたくなるはずです。居心地の悪さや落ち着かなさ、場違いな空気は、サイレントな職場に置かれた新人社員の心理状態は、これとよく似ています。

入社初日からしばらくの間、新人社員はちょっとした声かけや交流を求めています。基本的なあいさつはもちろん、「何か困ったことはありませんか?」といった気づかいの一言、さらに「週末は何をしていましたか?」という雑談一つでも、彼らは安心し、「自分はここにいていいんだ」と感じられるのです。

「サイレントな職場」には、コミュニケーションが生まれるきっかけがほとんどありません。あいさつをしても小さく返されるだけ。ひどい場合には無視されることすらあります。困っていても周りは自分の仕事に没頭し、誰も声をかけてくれない。そんな環境では「自分はこの組織の一員として認められていない」「居場所がない」と感じ、新人社員が早期に辞めてしまうのも無理はありません。

私がかかわったあるIT企業も、その典型でした。社員は優秀で仕事熱心ですが、個々の作業に集中するあまり、オフィスは常に図書館のような静けさ。新人社員、特に中途採用者の定着率が極端に低く、数週間で退職する人もいました。退職者の多くが「孤独だった」「相談できる空気がなかった」と語っていたことが象徴的でした。

この会社は事態を重く見て、コミュニケーションを増やす取り組みを導入しました。例えば、始業前の「朝雑談タイム」や、部署内で定期的に開催する「ランチ会」、ビジネスチャットでの気軽な雑談や感謝スタンプの使用推奨などです。最初はぎこちなかったものの、会話が徐々に増え、職場の雰囲気は明るく柔らかいものへと変わりました。それに伴い、新人社員の定着率も劇的に改善しました。

■気軽な声かけが新人社員を救う
もちろん、常ににぎやかな職場である必要はありません。仕事に集中するために、静かな環境も大切です。しかし、一日中、誰からも声がかからないほどの過度な静寂は、組織の活力を奪い、新しい仲間を心理的に孤立させてしまう「壁」となります。

「目は口ほどにものを言う」とはいいますが、それでも言葉によるコミュニケーションは不可欠です。困っている人に「どうしました?」と自然に声をかけられる空気、適度な雑談や笑顔がある職場こそ、新人社員が安心して根を下ろし、能力を伸ばせる場所なのです。

・声かけ例
●あいさつ
「おはようございます」「お疲れさまです」

●気づかい
「何か困ったことはありませんか?」「その作業、手伝いましょうか?」

●雑談
「昨日のドラマ、見ました?」「週末は何をしていましたか?」

あなたの職場は、新人社員を迎える声と笑顔で満たされていますか。それとも、冷たい静寂が支配する環境ですか。新人社員の不安を取り除くために、ほんの少し勇気を出して「最初の一声」をかけましょう。それが、組織の未来を変えるきっかけになるかもしれません。

【あなたの職場の改善ポイント】
静かすぎる職場は新人社員を孤立させます。あいさつ以外の声かけも意識的に行ないつつ、雑談タイムを設けるなど、気軽に話せる環境をつくりましょう。


瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士


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【プロフィール 瀬戸山孝之 日本オンボーディング研究所 代表・組織定着コンサルタント・特定社会保険労務士】
setoyama
1970年宮崎県生まれ。国立豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了。
パーソルテンプスタッフ株式会社にて、営業職18年・マネージャー職14年を経験。これまでに累計1万5000人以上の転職支援と、800社以上の企業の定着支援に従事する。
その現場経験のなかで、離職の真因が「入社初日」の対応にあることを突き止め、心理学と組織論を融合させた独自の「3ステップ・オンボーディング」メソッドを確立。
同社にて「スタッフコンシェルデスク」の立ち上げにかかわり、現在は年間2万人以上の新人の就業支援を行う傍ら、そのトラブル防止や職場定着に向けた人材育成研修を社内外で実施している。
「人が辞めない」「人が働きたくなる」職場づくりの実現をビジョンに掲げ、全国で離職防止に関する情報発信をしている。

公式サイト:https://sr-setoyama.com/sns




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