unnamed
「AIに仕事を奪われる」。生成AIの台頭で、この危機感がすでに現実のものとなりつつある昨今。さらに、自ら考え自律的に行動するAIエージェントの登場により、税理士や社会保険労務士といったいわゆる「士業」の仕事は、どんどん代替されていく可能性が高まっています。

経営コンサルタントで士業(特定行政書士)としても20年以上のキャリアをもつ横須賀輝尚氏は、開業当初からWEBマーケティングを強みとして活動し、生成AIが登場するとすぐに業務に活用、研究を深めてきました。

生成AIの本質を理解したうえで、AIに淘汰されるのではなく、むしろそれを活用して生き残るために士業はどうすればいいのか?同氏の新著『生成AI時代に士業が生き残る技術』(TAC出版)より、一部抜粋・編集してお伝えします。

生成AI時代に士業が生き残る技術
横須賀輝尚
TAC出版
2026-06-30


■有料セミナーはもう売れない
士業の仕事がなくなるのは、何も生成AIだけが要因ではありません。どんな仕事がなくなるのかは、総合的に考察する必要があります。士業の定番業務だった「相談業務」、士業が第3の手法として手をつけた有料セミナー、コンサルティング事業―。あらゆるセミナー、あらゆるコンサルティングがダメになったわけではありません。生き残る方法はありますが、シンプルに、「有料セミナー事業」は今後成立させるのが難しいと考えたほうがよいということです。

なぜ、「相談業務」や「有料セミナー」「コンサルティング事業」が壊滅的なのか。もちろん生成AIの登場も大きな要因です。しかし、最大の要因として見逃せないのは、「インターネット上にコンテンツが増えすぎた」ことです。

その最たる要因はYouTubeです。YouTubeは2005年にスタートし、当初は動画共有サイトとして始まりました。2005年時点では1日3万人の訪問者でしたが、2006年には1日2万本以上の動画がアップロードされるようになり、1日1億回以上の再生が記録されるまでになったのです。

ただし、この時点ではYouTubeをメインの情報源として考える人は多くなく、「メントスコーラ」のようなエンタメ動画を見るひとつの選択肢にすぎなかったと言えます。

その後、YouTubeはGoogleに買収され、Googleのサービスになります。そして、スマホの普及により、誰でも動画が簡単に撮れ、アップロードできる時代となり、当然、動画数が増加していきました。

加えてコロナ禍により、ステイホームの影響から、動画視聴、動画投稿も爆発的に増加したのです。

現在は、1日あたり平均2,000万本以上の動画がアップロードされ、プラットフォーム全体で約150億本の動画が投稿されていると言われています。

つまり、お金をかけてセミナーを受講しなくても、YouTubeを見れば何かしらの情報が無料で手に入る時代になったわけです。これでは、有料セミナー、有料コンテンツは太刀打ちできません。

■いまのお客様は「80点程度」のものなら無料を選ぶ
もちろん、有料セミナーを否定するものではありません。お金を支払うことでも自己成長できますし、有料セミナーにしかないノウハウも存在するでしょう。

しかし、その内容が「80点程度」のものであれば、YouTubeにもそれに準じた何かしらのコンテンツが無料で存在するのです。数万円のセミナーと無料で手に入るコンテンツ。やはり「無料」は強いのです。

加えて、いまではYouTubeがインターネット上のサブ的情報収集源ではなく、メイン収集源になっているという現実があります。インターネット黎明期からネットを使っている、という人にはインターネット上の情報はサブ的な意味合いが強いと思いますが、世間は違います。

総務省の『令和7年度情報通信白書』によると、YouTubeの利用率は50代までの各世代で8割を超えています。60代でも7割以上の利用経験があり、全体の利用率は約88%で、特に注目すべきは60代以上の利用率の伸びです。

2014年には24%ほどにすぎなかった60代のYouTube利用率が、2024年にはなんと約71%と約3倍になっています。つまり、国民のほとんどがYouTubeを日常的に利用し、もはやメインの情報源にし始めていると言えます。

最近のテレビのリモコンにはYouTubeのボタンがあります。パソコン、スマホだけでなくテレビでもYouTubeを見る人が増えました。

こうした「ほとんどの情報が無料で手に入る」時代に、セミナー業は強い向かい風にさらされているようなものです。コンサルティング業にも同じことが言えます。

生成AIによって動画生成のハードルすらも下がっています。さらに人並みのコンテンツの価値が下がっていくことは確実で、活字メディアで文章の価値が暴落したように、動画も同様の事態が起こる可能性があります。

つまり、バズを狙ったコンテンツ型の情報発信は冬の時代に入ったのです。情報発信するときには徹底的なテーマとターゲットの絞り込みが必要となるでしょう。

インターネット上には情報が溢れかえっています。そのなかで自分のことを見つけてもらい、仕事を依頼してもらうためには、お客様に「自分のためだけの情報だ」と思ってもらう必要があるのです。

■その「コスパ」「タイパ」は本当によいのか
なお、近年では「コスパ」「タイパ」という言葉が一般的になりました。特に、「いかにコスパよく」仕事や生活をするかという概念が広まったのです。

コロナ禍後、社会はステイホームを余儀なくされ、一時的に営業や情報発信の手法がインターネットのみになりました。それによって、ウェブサイトもブログも、動画も著しく大量に増加しました。

その結果、「情報は有料で買うもの」という考え方が陰りを見せました。例えば、YouTubeのように、ほとんどの情報はネットから無料で知れるようになったのです。いわゆる「コスパ重視」の情報収集が当たり前となりました。

確かに、情報が無料で手に入るのであれば、それに越したことはありません。しかし、無料の情報収集は、コスパがよかったとしても、タイパ的には最悪になる可能性があることは知っておきましょう。

例えば、AIの情報を得たいと考えてYouTubeで検索したとします。この45分程度の動画に自分の知りたい情報があるような気がする。動画を見始めてもどうも違う。必要な情報はもっと先にあると思って、シークバーを進める。でも見当たらない……。

結局、該当箇所を探すために、最初から最後まで見たけれど、自分のほしい情報はなかった。関連動画にあるかもしれないから、また別の動画を見出す。

この一連の行動は確かに無料です。しかし、何も得ていないわけで、約1時間がムダになります。もちろん、何かしら情報は手に入れているので、まったくのムダというわけでありません。でも、こんなことを続けたらどうなるか、説明するまでもないはずです。

それなら、コンサルティング報酬を支払ってでもコンサルタントのような専門家から、自分にとって本当に必要な情報・知識を30分で聞くほうが、圧倒的に効率はよいはずです。

別の言い方をすれば、自分に投資できる人が減ったとも言えます。しかしながら、士業は自分を磨いてこそ報酬が取れる商売です。自己投資を渋るということは自己成長を否定することです。

これからの時代、いかに世の中の風潮に逆らって自己投資できるかどうかも、成功の分かれ目だと言えるでしょう。


横須賀輝尚 士業専門の経営コンサルタント・パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役・特定行政書士・Gensparkインダストリーアンバサダー


【関連記事】
■AI台頭で経営コンサル過去最大の倒産数に。コンサル業はオワコンなのか? (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/63303969-20260628.html
■「士業はAIに仕事を奪われるか?」という問いがズレていると言えるワケ (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/63303889-20260628.html
■資格で稼ぐなら「変」と言われるのを恐れるな。徹底した顧客目線で分かること (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/63303406-20260628.html
■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/62674731-20250930.html
■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万?(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/61186482-20240125.html


■プロフィール 横須賀輝尚 士業専門の経営コンサルタント・パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役・特定行政書士・Gensparkインダストリーアンバサダー
yokosuka
2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、2023年現在、全国3000名以上の士業から相談を受け、その相談数は優に2万件以上を超える。
主な著作に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)、「資格起業BIBLE」、「『ムダ仕事』も『悩む時間』もゼロにする GPTsライフハック」(共に技術評論社)などがあり、26冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。
最新刊「生成AI時代に士業が生き残る技術」を2026年6月にTAC出版より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。

公式サイト:https://yokosukateruhisa.com/
X:https://twitter.com/yokosuka_ai  @yokosuka_ai
YouTube:https://www.youtube.com/@40lawyers50/


生成AI時代に士業が生き残る技術
横須賀輝尚
TAC出版
2026-06-30


この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。