![]() 経営コンサルタントで士業(特定行政書士)としても20年以上のキャリアをもつ横須賀輝尚氏は、開業当初からWEBマーケティングを強みとして活動し、生成AIが登場するとすぐに業務に活用、研究を深めてきました。 生成AIの本質を理解したうえで、AIに淘汰されるのではなく、むしろそれを活用して生き残るために士業はどうすればいいのか?同氏の新著『生成AI時代に士業が生き残る技術』(TAC出版)より、一部抜粋・編集してお伝えします。 ■どんな商売も永遠には続かない 「AIに代替される」というと、時代の流れの中の大きな出来事のように感じられますが、そもそもどんな時代のどんな商売でも、永遠に続く保証なんてどこにもないのです。 典型的な例を挙げれば、1990年代に大流行したポケベルや、それ以降に浸透したいわゆる「ガラケー」と呼ばれる携帯電話。これらはいまや見る影もありません。 機織り工、電話交換手など、挙げればきりがありませんが、世の中の流れによって、なくなった職業はあるのです。なぜ、国家資格だけは守られると考えられるのでしょうか。なんとなく、自分の仕事はさすがになくなることはないだろう、多くの士業がそう思っているはずです。 ちなみに、実際になくなったのではなく、公的資格から民間資格になったものがあります。代表的なものとしては、日商簿記などが当てはまるでしょう。 文部科学省技能審査として存在していた公的資格21種が2005年に廃止され、民間資格に移行しました。日商簿記、漢字検定、販売士など、21種類が公的資格でなくなったのです。 生成AIの進化によって、世界全体でタイパ、コスパを追求した結果、資格そのものが淘汰され再構築される。そんな未来が到来する可能性は大いにあります。 「資格を持っているからといって安泰ではない」とは昔から言われてきました。『進化論』のダーウィンではありませんが、正解のない時代に変化を当然に受け入れ、現実に合わせた最適化がこれからの士業には必須だと言いたいのです。 このように、そもそも安泰を保証されている職業や商売などはなく、常になくなる可能性をはらんでいることをよく知っておくべきです。 ■「失われた40年」に武器のない士業こそ変わる覚悟を持つ 「生成AIによって士業の仕事・収入はなくなるのか?」というのが本題ですが、何も士業の業務に影響を与えるのは、生成AIだけではありません。 1990年代以降、日本経済は停滞しています。GDPは低下の一途をたどり、2026年にはインドに抜かれ、世界第5位に転落すると言われています。経済が失速し、いつまでたっても回復しない現実は「失われた40年」とも言われます。 例えば、2026年5月、株価は一時6万円超を記録するなど日本経済は好調のように見えましたが、2024年、2025年の企業の倒産件数は約1万件。そのうち約8割が小規模企業であり、農業、飲食・外食、訪問看護などは過去最高の倒産数になっています。 倒産の原因としては、コロナ禍時のいわゆるゼロゼロ融資の返済が不可能になったとか、物価高騰により仕入れも維持も厳しくなったとか、あるいは、社会保険料・消費税の負担など多種多様です。つまり、中小企業は不況なのです。 2026年には中東で戦争も起こりました。こうした想定外のことが引き金になり、不況に拍車がかかることもありえます。 不況であれば、当然切れるものは切っていく。コストダウンを考えます。そのとき、士業の顧問契約なども当然のように視野に入ります。実際、士業に落ち度はなくても、顧問企業の経営難によって、値下げ要請や顧問契約の解除などは、各地方都市でも相次いでいます。 士業で顧問契約をすることが多いのは、税理士、社労士、弁護士などです。特に、会計部門は絶対的に必須なので、税理士が切られるということは決して多くはないでしょう。しかし、手続代行中心の社労士の顧問契約はコストと見られる可能性を十分に持っています。弁護士も同じです。トラブルに巻き込まれているときは必要ですが、平和な日常で高い報酬の顧問契約を継続する理由はなくなります。企業自体が苦しいわけですから。 また、企業倒産のデータで注目すべきなのが、「経営者の病気・死亡による倒産」で、2025年には過去最多を更新したという点です。「少子高齢化」という言葉は、いまでは当たり前に使われますが、実際に経営者も超高齢化しているのです。 東京商工リサーチ『TSRデータインサイト』によると、2025年時点の経営者の平均年齢は63.81歳。全体の分布図でも70代以上が構成比の約35%を占め、50歳以上の経営者が実に約87%にのぼります。事業承継やM&Aで存続できればよいですが、中小企業の経営が苦しいことはすでにお伝えしたとおりで、すべての企業が事業承継や売却をできるわけではなく、廃業を選ぶことも多いのです。 さらに、見逃せないのが廃業の多さです。帝国データバンク『全国企業「休廃業・解散」動向調査』によると、2025年に休業・廃業・解散した会社は6万7,949件。過去10年で2番目に多い数となりました。注目すべきは、その約半数が黒字のまま廃業しているのです。M&Aや事業承継をすることなく、さまざまな先行き不安から「あきらめ」による廃業が増えているのです。 つまり、顧客自体も減少しているのです。これに人口減少も加われば、生成AIで仕事が奪われる可能性だけでなく、客数減少という現実もあるのです。 顧問先企業が減少するということは、当然、法務、税務、労務、登記、許認可などの士業の業務の依頼件数が減るので、市場のパイの奪い合いになるということです。 もう一度、まとめましょう。 (1)士業の業務は生成AIの台頭によって、奪われる可能性を持っている (2)そもそも、安泰といえる職業など存在しない (3)生成AI以外にも、士業の仕事がなくなる要因が多数ある 繰り返しになりますが、これは未来の話です。2026年時点では、この影響は微々たるものです。しかし、この流れが小さくなることはなく、次第に大きくなっていくとは言えます。 ■では、もう士業はダメなのか? 私は士業を絶望させたいわけではありません。確かに、上記のような要因を前提とすると、明るい未来が待っているように思えないかもしれません。しかしながら、私はコンサルタントとして嘘をつきたくないので、あらためて明言しておきます。 これまでの標準的な士業に待っている未来は明るくありません。 そこで、「士業とは何か?」という根本的な問い、これが最大のポイントになります。 もし、士業としての本質を理解し、そして変わる勇気を持っていれば、必ず新しいビジョンが見えてきます。 自分の未来にどのような選択をしますか?何の武器もないまま、このまま縮小していくのですか? これまでの正解を捨てて、どれだけ小さな一歩でもいいので、前に進む。いま変わる覚悟をしなければ、10年後どころか、数年先にも活躍の場が残っているかはわからないのです。そのきっかけになるのが生成AIなのは、言うまでもありません。 横須賀輝尚 士業専門の経営コンサルタント・パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役・特定行政書士・Gensparkインダストリーアンバサダー 【関連記事】 ■AIエージェントの「ひとり事務所」が何十社の顧問業務を回す衝撃。士業の未来はどうなる? (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63314197-20260702.html ■生成AIで「誰でも秒で80点」の世界観が士業の仕事に与える影響 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63304072-20260628.html ■生成AIがもたらすコンテンツビジネスの終焉 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63304046-20260628.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万?(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 横須賀輝尚 士業専門の経営コンサルタント・パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役・特定行政書士・Gensparkインダストリーアンバサダー ![]() 主な著作に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)、「資格起業BIBLE」、「『ムダ仕事』も『悩む時間』もゼロにする GPTsライフハック」(共に技術評論社)などがあり、26冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。 最新刊「生成AI時代に士業が生き残る技術」を2026年6月にTAC出版より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。 公式サイト:https://yokosukateruhisa.com/ X:https://twitter.com/yokosuka_ai @yokosuka_ai YouTube:https://www.youtube.com/@40lawyers50/ シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



