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「大きな目標達成には時間がかかる」。これは本来、至極当たり前のことでしょう。しかし、楽にできるノウハウやタイパ重視の考え方が蔓延する現代において、つい忘れられがちな事実でもあります。

時短コンサルタントの滝川徹氏は、この事実を前提とした上で、充実した人生を送るには、身につけるべきスキルを見極め、しっかりと時間をかけて習得する必要があると説きます。一方、そこに時間と努力を「オールイン」するのではなく、たった1日30分を続けることで、人生のバランスを取りながら、無理なく地道にスキル習得を続けられるといいます。この超現実的な目標達成法、「10年思考」とは?

この記事では、なぜ目標達成のために人生のすべてを捧げる「オールイン戦略」が万人向けではないのか、凡人が人生の質を保ちながら目標達成するにはどうすればいいのかについて、『10年思考でうまくいく――自己投資を実現するスキル戦略』(滝川徹・パンローリング株式会社)から再編集してお届けします。



■オールイン戦略と10年思考
まず、オールイン戦略は犠牲になるものがあまりにも大きい。生活面でみた場合、睡眠や運動を犠牲にすれば健康を害する。オールイン戦略の一番の問題は、目標達成に集中しすぎるがあまり、人生のほかの要素(大抵は重要で、失うと取り戻しがつかないもの)が犠牲になることだ。

マイクロソフトのビル・ゲイツやアマゾンのジェフ・ベゾスをはじめ、アメリカの経済誌フォーブスの長者ランキングのトップに名を連ねる人物の大半が離婚を経験している。全てとは言わないが、仕事に熱中しすぎた結果なのは想像に難くない。何かにたくさん時間を使うということは、その分、ほかの何かに使える時間を犠牲にすることだ。目標達成を優先するあまり、妻や子供、友人と過ごす時間を犠牲にすれば、人間関係は希薄になり破綻する。

「私はこの目標を達成できさえすれば、人生でほかに何もいらない」という人は、それでいいかもしれない。だが私を含め、おそらく多くの人はそうではない。人生に何かしらバランスを求めているはずだ。仕事やキャリアで目標を達成したい。でもそれだけでなく、家族と一緒にたくさんの時間を過ごして、思い出を作りたい。友人と遊んだり、趣味も楽しみたい。こうした人には、オールイン戦略は向かない。

さらに、オールイン戦略のもうひとつの難点。それは「いつまでがんばり続ければいいかわからない」ことだ。学生時代の部活なら、引退という期限がある。私も大学時代に体育会のテニス部で今では考えられないくらい練習したが、それも「引退まで」という期限があったからだ。一方で、社会人になってからの目標には大抵期限がない。税理士資格を取ると決めた場合、自分で何年以内に合格するという目標は決められる。しかしこれは期限とは異なる。目標は、期限と違って自分で延ばすことができるからだ。

少なくとも税理士資格の場合、厳密に言えば「合格するまで」が期限になる。問題は、この「いつ合格できるか」を、私たちがコントロールできないことだ。合格まで3年かかるかもしれないし、10年かかるかもしれない。つまり、いつまでがんばればいいかわからない。そんな中、毎日数時間勉強を続けられる人は少ない。多くの人は挫折することになる。

ここまでの話で私が伝えたいのが、期限をコントロールできない目標に対してオールインするリスクだ。社会人になってから達成したいと思う目標は、資格試験であれ、年収アップであれ、M-1優勝であれ、達成できるタイミングをコントロールできない。

サンドウィッチマンの二人はM-1優勝まで10年かかったが、もしかしたら20年かかったかもしれない。本人達も言っているが、M-1優勝は実力があればできるものではないからだ。もちろん実力があれば優勝の可能性は高まるだろうが、優勝できるかどうかは実力以外の運をはじめとした、様々な要素で決まる。そういう意味では、実力がありながらも結果に結びつかず、悔しい思いをしているコンビも多いのだろう。

このように、オールイン戦略を選ぶということは、いつまでその努力を続けていいかわからない中、毎日全力で走り続けることと言える。ここであらためて問いたい。それでもオールイン戦略を選ぶだろうか? 多くの人はNOだろう。そんな人のために、「10年思考」を提案する。なぜ10年思考がオールイン戦略より万人向けと言えるのか。

■10年思考のメリット
10年思考の一番のメリットは、オールインと比べて犠牲になるものが圧倒的に少ないことだ。1日に費やす時間だけ考えても、オールインの場合、目標を達成するまで毎日数時間費やすことになる。それに比べて、10年思考の場合は毎日30分ですむ。これなら家族や友人と過ごす時間、趣味を楽しむ時間も確保できる。1日単位はもちろん、長期的に見ても人生のバランスを保ちやすい。

また、目標達成までの人生の質にも着目したい。オールインの場合、毎日数時間努力するので毎日がしんどくなる。しかも、それが何年続くかわからない。つまり、努力している期間、人生はつらいものになる。一方、毎日30分なら10年、20年でも無理なく続けられる。もっと言うと、取り組み方を工夫することで30分を楽しむことすらできる。

今、私は書籍の原稿を毎日コツコツ書いているが、楽しみながら書いている。執筆から得られる達成感は私の毎日を充実させてくれる。こうした観点でも、10年思考のメリットは想像よりはるかに大きい。

■時間視点の質と量
また着目してほしいのは、時間の「質」だ。世界的に有名な作家のグレッグ・マキューンは原稿を2時間で2ページ書けるが、さらにがんばって4時間やっても3ページしか書けないと言う。理由は単純だ。人間は機械ではないので、長い時間作業すれば集中力が落ち、作業の質が低下するからだ。一般的に人が「ダレ」「飽き」を起こさずに集中力を維持できるのは30分が限界とされている。つまり、毎日何時間も頑張るより1日30分を高い集中力で続ける方が、結果的に短い総時間で完了できるのだ。

たとえばひとつの目標を達成するのに、毎日30分取り組んだら1000時間かかり、毎日4時間で1360時間かかるとする。もし私が残り40年で40個目標を達成したいとすると、毎日30分取り組んだ場合で、4万時間(1000時間×40個)を費やす計算になる。一方、毎日4時間取り組んだ場合は5万4400時間だ。その差は1万4400時間。これは日数にすれば600日、2年近くの時間になる。40年という限られた時間で2年も時間が浮く。めちゃめちゃ得した気分にならないだろうか?

ものすごく単純化して説明したが、私が言いたいことはわかってもらえたと思う。10年思考で行動したほうが、オールイン戦略よりも時間を創出することができるのだ。

誤解しないでほしいが、私は10年思考のほうがオールイン戦略より優れていると言いたいわけではない。何事もそうだが、何が良いか悪いかは、文脈や見方で変わるからだ。たとえば目指すゴールが直前に迫っていて、目標を達成できなければ大きく人生に影響を与える状況なのであれば、オールイン戦略を選ぶべきだろう。

あるいは、スポーツでもビジネスでも漫才でもいい。何かにおいて超一流=上位1%の人物になりたい。そう考えるなら、オールインは不可欠だ。このことについて、私が好きな起業家のトム・ビリューは、成功するためには「長い時間、ハードに(=超集中して)、スマートに働かなければならない」と説く。

彼はよく「なぜハードにスマートに働いているのに、さらに長く働かなければいけないのか?」と聞かれるのだそうだ。それに対し「3つ全てをやっている僕と対決することになるからだ」と答えるという。彼の発言からわかるのは、スポーツであれ、ビジネスであれ、お笑いであれ。超一流になるには、3つ全てが必要ということだ。

なぜなら世の中には頭がいい人がたくさんいて、ハードにスマートに働ける人はたくさんいる。その中で勝ちたいなら、当然ほかの人よりもさらに努力しなければならない。それはつまり、長く働くということ。オールインしなければならないということだ。

このように、どんなふうに生きたいかにより、どちらの戦略を選ぶべきかは必然的に変わってくる。おそらく多くの人は期限が差し迫った目標は持っていないだろう。何かにおいて一流になりたいかもしれないが、超一流は目指していないだろう。おそらく私のように、人生にバランスを求めている。それなら、10年思考を選ぶのが合理的なのだ。


滝川徹 時短コンサルタント


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【プロフィール 滝川徹 時短コンサルタント】
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1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒。国内トップの大手金融機関で毎日定時に帰る現役会社員。著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』(日本実業出版社)、『気持ちが楽になる働き方』(金風舎)のほか、『細分化して片付ける30分仕事術』(パンローリング)は台湾で翻訳出版された。
長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みで全国表彰、2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その後は順天堂大学や創業手帳株式会社での講演・研修をはじめ、時間管理をテーマに講師として活動。国内最大級のスキルシェアプラットフォーム「ストアカ」の上位2%のトップ講師に選出される。Yahoo! ニュースへの執筆や、YouTubeで動画配信など幅広く活動中。



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