![]() 時短コンサルタントの滝川徹氏は、この事実を前提とした上で、充実した人生を送るには、身につけるべきスキルを見極め、しっかりと時間をかけて習得する必要があると説きます。一方、そこに時間と努力を「オールイン」するのではなく、たった1日30分を続けることで、人生のバランスを取りながら、無理なく地道にスキル習得を続けられるといいます。この超現実的な目標達成法、「10年思考」とは? この記事では、コツコツとスキル磨きに取り組む際、必ず突き当たる壁となる「めんどくさい」への対処法について、『10年思考でうまくいく――自己投資を実現するスキル戦略』(滝川徹・パンローリング株式会社)から再編集してお届けします。 ■なぜ着手へのハードルは高いのか なぜ人は思うように実行できないのか。その本質に迫るキーワードは「心理的ハードル」だ。 心理的ハードルとは、何かに取り組もうとするときに「面倒くさい」「やりたくない」と抵抗を感じる、あの感覚を想像してもらうとわかりやすい。 私の場合、半年前くらいから本格的にはじめたYouTubeの動画収録のときにこれを強く感じる。カメラに向かって話すだけでも、かなりのエネルギーを使う。その後も慣れない動画編集という、さらに面倒くさい作業が待っている。 そう思うと「しんどい」「やりたくない」という気持ちが湧く。これを乗り越えて実行するためには、心理的ハードルの本質を正しく理解する必要がある。その本質を理解できれば、対処法もわかるからだ。 心理的ハードルとは一体なんなのか。どのように生まれ、どうすれば乗り越えられるのか。 まずは脳の仕組みを解説することからはじめたい。 ■2つの脳が対立して生まれる葛藤 まず理解してほしいのは、脳には2つの機能があることだ。タイムマネジメントの名著『仕事に追われない仕事術』(マーク・フォースター著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)では「理性の脳」と「衝動の脳」と表現されている。 理性の脳は「キャリアアップのために勉強しよう」「健康でいるために運動しよう」など、計画や実行、セルフコントロールを司る脳と言える。複雑な思考や計算をするときは、この脳が機能する。 一方、衝動の脳は爬虫類の脳とも言われ、太古の昔からあまり進化していない脳だ。私たちが「本能」というときは、この脳を指すと言っていい。理性の脳と対極で、考える機能はない。自動的・反射的に反応し、高速で働くのも特徴だ。車を運転中に人が飛び出してきて回避するとき、衝動の脳が機能する。理性の脳で考えていては、間に合わず衝突してしまうからだ。 心理的ハードルは、この2つの脳が対立するときに生まれる。勉強しようとするとき(理性の脳でそう決めたわけだが)、衝動の脳が「面倒くさい」「やりたくない」と感じる。こうして2つの脳が対立すると、葛藤が生まれる。これが心理的ハードルの正体というわけだ。 残念なことに、衝動の脳と理性の脳が対立すると、基本的には衝動の脳が勝つとされている。なぜか。脳の仕組みから、ものすごく簡単に解説すると、次のようになる。 私たちの意思決定は、衝動の脳→理性の脳の順で機能する。ある行動をしようとするとき、まず衝動の脳がやるかやらないかを判断する。理性の脳はその判断をチェックし、最終決定する役割を果たす。問題は大抵の場合、理性の脳は衝動の脳の判断をそのまま「問題ない」と判断する傾向にあることだ。 脳は基本的にエネルギーをセーブする仕組みになっていて、危機が訪れたり、ややこしい問題に対処するとき以外は、理性の脳を極力使わないように設計されているからだ。こうした理由から、私たちの判断の大半は衝動の脳で決まることになる。理性の脳は関与するものの、衝動の脳の判断がほぼそのまま採用されてしまう。 こうした脳の仕組みを理解できると、自ずと心理的ハードルへの対処法も見えてくる。考えなければならないことは、衝動の脳をどう説得するか、なのだ。 勉強しようとするときに衝動の脳が「やりたくない」と感じれば、心理的ハードルが生まれ、実行できずに終わる。私たちがなすべきは、衝動の脳が「やりたくない」と感じないようにすることだ。そうすれば、心理的ハードルが生まれず実行できるようになる。 では、どうすればそれができるのか。 衝動の脳が「それくらいならできそう」と感じられるくらい、簡単なことからはじめればよい。面倒くさい仕事に取り組むときに「とりあえず資料を広げよう」と考えてみる。そうすると衝動の脳は「それくらいならできそう」と判断する。結果、心理的ハードルが生まれず着手できる。人には着手すると意欲が高まる性質がある。着手さえできれば、そのまま仕事に取り組める可能性は高い。 ここでのポイントは「今からやることは大したことじゃない」と衝動の脳をダマしていることだ。衝動の脳には考える機能がないので、やってみるとわかるが、比較的簡単にダマすことができる。 脳をダマす方法はいくつかあるが、これまで特に秀逸と感じたのは、イギリスの著名な作家ニール・ゲイマンの手法だ。この話は拙著『30分仕事術』にも書いたが、あらためて紹介したい。 ■しなくてもいいが、してはいけない? ニールは執筆するとき「文章を書かなくてもいいが、書くこと以外は何もしてはいけない」をルールにしているという。イスに座り、ぼーっとしていてもよい。景色を眺めてもいい。でも、スマホを見たりゲームをしてはいけない。文字通り、書くこと以外は何もしてはいけない。そうすると、5分も経つと暇になり、書きはじめるという。 この手法が秀逸な理由は2つある。ひとつは「文章を書かなくていい」と、はじめに脳をダマしていることだ。これから小説を書くぞ!と思えば、衝動の脳は「大変そう」と感じ、心理的ハードルが生まれてしまう。そこで、書きたくなければ書かなくてもいい。そう自分に許可する。そうすることで、衝動の脳も「それならやれる」と判断し、机に座ることができる。 もうひとつは、書くこと以外を禁止することで、自然と執筆に自分を仕向けていることだ。多くの人にとって何も見れず、何もいじれず、ただ何もせずに時間を過ごすのは苦痛だ。何もできずに苦痛でいるくらいなら執筆しよう。自然とそう思い、執筆をはじめるようになる。そうして着手できれば、執筆を続けられるというわけだ。 この手法は執筆以外にも当然活用できる。次のように、実行したいことを「しなくてもいい」と許可し、それ以外のことはしてはいけない。そう行動を制限すればいい。 ・企画書を書かなくてもいいが、それ以外何もしてはいけない ・AIの研究をしなくてもいいが、それ以外何もしてはいけない ・勉強をしなくてもいいが、勉強以外何もしてはいけない ・部屋を片付けなくてもよいが、片付け以外何もしてはいけない この話から伝えたいこと。それは、私たちの行動は衝動の脳に左右されるものの、対処法さえ知っていれば自らをコントロールできるということだ。ならば、どうすれば心理的ハードルを下げることができるのか。原理原則を理解すれば、数学の方程式を解くように、先延ばし・先送りの問題は簡単に解決できるようになる。 滝川徹 時短コンサルタント 【関連記事】 ■「10億円あってもやりたいことは?」好きなことを天職につなげるスキルの選び方 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63368743-20260726.html ■やりたいことと生活費を切り分けて考えれば、天職はすぐに見つかる。 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63368684-20260726.html ■なぜ「1日30分」の継続が「毎日全力」より早く終わるのか?挫折しない目標達成法 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63366432-20260725.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール 滝川徹 時短コンサルタント】 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒。国内トップの大手金融機関で毎日定時に帰る現役会社員。著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』(日本実業出版社)、『気持ちが楽になる働き方』(金風舎)のほか、『細分化して片付ける30分仕事術』(パンローリング)は台湾で翻訳出版された。 長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みで全国表彰、2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その後は順天堂大学や創業手帳株式会社での講演・研修をはじめ、時間管理をテーマに講師として活動。国内最大級のスキルシェアプラットフォーム「ストアカ」の上位2%のトップ講師に選出される。Yahoo! ニュースへの執筆や、YouTubeで動画配信など幅広く活動中。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



