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食料品の消費税を2027年4月から2年間、1%に引き下げる案が現実を帯びてきました。給付とあわせて、家計負担を「実質ゼロ」に近づける方針です。これは多くの家庭にとって朗報でしょう。ただ、私が投資助言の現場で20年以上見てきた経験からいえば、この「浮いたお金」は放っておくとほぼ確実に消えます。今日はその理由と、減税分を消えないお金に変えるための、誰でも今日からはじめられる方法をお話しします。

■「実質ゼロ」で家計はいくら浮く? まず知っておきたい「消えるお金」の正体
まずは制度の中身を整理しておきましょう。現在、食料品には8%の軽減税率が適用されています。政府が検討しているのは、2027年4月から2年間、税率を1%に引き下げる案です。さらに1%分に相当する年約6,000億円を原資に所得連動型の給付を行ない、実質的な負担をゼロに近づけるとしています。レジの改修が1%なら5〜6か月で済むという事情もあり、「完全ゼロ」ではなく「1%+給付」という形が有力視されています。

では、実際に家計はいくら浮くのか。ここが一番知りたいところでしょう。総務省の家計調査(2025年)をもとにした試算では、食料品の消費税が0%相当になった場合、単身世帯で月およそ2,400円、2人以上世帯では月およそ5,300円の負担減となります。年換算すれば、単身で約29,000円、2人以上世帯で約64,000円です。

この恩恵は、世帯の家族構成や年齢層によってさらに色濃く表れます。特に食費がかさみがちな子育て真っ盛りの30代・40代世帯(2人以上)であれば、月におよそ4,500円から5,500円程度の負担軽減が見込まれます。たとえば、お子さん2人の4人家族を想定すると、年間で6万円台後半もの余剰資金が生まれるケースも少なくありません。これは家計にとって、無視できない大きな原資となるはずです。

ところが、ここで冷静に考えていただきたいことがあります。この減税は2年間限定です。そしてその2年の間も、食料品の値上げが止まる保証はどこにもありません。実際、近年の日本では名目賃金が上がっても物価上昇に追いつかず、手取りの実質的な価値が目減りし続けています。つまり、消費税で数千円が浮いても、食料品自体が値上がりしていれば、浮いたお金は財布に入ったという実感すら持てないまま、日々の買い物に溶けて消えていくのです。「気づいたら、いつの間にかなくなっていた」これこそが、減税分に待ち受ける「消えるお金の法則」です。

■そのまま貯金は「じわじわ目減り」 浮いたお金の賢い置き場所
月数千円というお金は家計の中では非常に中途半端な金額です。旅行に行けるほどではなく、かといって節約を実感できるほど大きくもない。だからこそ、多くの人は無意識のうちに日々の支出に紛れ込ませてしまいます。行動経済学の知見に照らせば、こうした性質を持つ資金、つまり「あらかじめ使い道を固定していないお金」こそ、最も手元から失われやすい存在なのです。人は財布に余裕があると感じると、少しだけ良いものを買い、少しだけ多く使ってしまいます。

ここで一般的な家計術は、「浮いた分を貯金しましょう」とアドバイスします。もちろん貯蓄は大切です。しかし専門家として一歩踏み込んで伝えたいのは、いまの日本で現金のまま置いておくことは、物価高の前ではむしろ静かに目減りする選択だということです。

物価が年2%上がる局面では、銀行に眠らせた100万円の価値は、1年後には実質98万円の買い物しかできなくなります。減税で浮いたお金を守るはずの貯金が、実は少しずつ削られていくわけです。

だからこそ私は「浮いた減税分は意識的に運用へ回す仕組みを作りましょう」とお伝えしています。ポイントは「気づかないお金」を「気づかないうちに増える仕組み」に変えることです。そして、その最も身近で強力な器が新NISAです。もともと消費税減税で浮いたお金は、家計にとって「なくても回っていたお金」でしょう。だからこそ、日々の生活を切り詰める痛みを感じることなく、そっくりそのまま運用に回せる。これほど始めやすい投資の原資は、そうありません。

■実践編~減税分の投資には新NISAのつみたて投資枠が正解~
こうした提案をすると「毎月わずか数千円を運用に回したところで、本当に効果があるのか」という疑問を抱く方も多いでしょう。しかし、私の答えは明確です。その少額こそが、将来的に計り知れない価値を生み出します。その鍵を握るのが複利の力です。

たとえば、減税で浮いた月5,000円を、全世界株式やS&P500などのインデックスファンドで、年5%の利回りを想定して20年間積み立てたとします。積み立てた元本は120万円です。ところが、運用によって育ったお金(資産)はおよそ200万円前後になると計算できます。80万円近くが、あなたが特に何もしなくても増えた「消えないお金」というわけです。2人以上世帯の減税額は月1万円には届きませんが、浮いたお金に少しだけ上乗せして月1万円の積立に回せば、この試算結果はそのまま倍になります。たかが数千円が、20年間という時間を味方につけると、まったく違う顔を見せるのです。

なぜ新NISAのつみたて投資枠なのか、理由は3つに絞れます。

第一に、運用で得した利益に本来かかる約20%の税金がゼロになること。せっかく増えた利益を丸ごと受け取れるのは、非課税制度ならではの強みです。第二に、つみたて投資枠の対象商品は、金融庁が長期の積立・分散投資に適していると認めた投資信託に限られていること。初心者でも、不適切な商品を選んでしまうリスクを抑えられます。第三に、毎月自動で買い付ける設定にすれば、あとは「ほったらかし」でよいこと。忙しい人にこそ向いています。

そして、この投資には明確な意味があります。食料品の値上げに苦しむ時代に、値上げに連動して価値が育ちうる資産を持つこと。これはいわば、自分自身で作る物価高対策の保険です。減税という一時的な追い風を、物価高という逆風に立ち向かう長期的な備えへと変える。これが減税分投資の本当の狙いなのです。

■投資を「値上がり待ちのギャンブル」から「続ける生活習慣」へ
とはいえ「投資はやっぱり怖い」「下がったらどうするのか」という不安は当然のものだと思います。私はその気持ちを否定しません。むしろ、不安には正面からお答えしたい。

積立投資の本質は、値上がりを当てにいくギャンブルではありません。安いときも高いときも淡々と買い続け、買い値を平準化していくことにあります。相場が下がった月は、同じ5,000円でより多くの口数を買えます。つまり、下落は長期の積立にとってはむしろ仕込みの好機ですらあるのです。一度にまとまったお金を投じるのではなく、毎月コツコツ買うからこそ、高値掴みのリスクを自然に抑えられる。これが積立投資の最大の安心材料です。

私はこれまで一貫して、投資を一部の富裕層の特権から誰もが続けられる生活習慣へ、という理念を掲げてきました。歯磨きや家計簿と同じように、投資も「毎日毎月当たり前の習慣」にできれば、身構える必要などなくなります。そして、その第一歩に、消費税の減税分ほどふさわしいものはありません。もともと財布から消えていったはずのお金なのですから、失敗を恐れる必要もなく、生活を圧迫することもないのです。

最後に、今日から取れる最もシンプルな行動を提案します。減税で浮くであろう金額、たとえば月3,000円でも5,000円でも構いません。その分だけを新NISAのつみたて投資枠で、全世界株式などのインデックスファンドに毎月自動積立てで設定してください。あとは何も考えず、ただ続けるだけです。制度が始まる2027年4月まで少し時間があるからこそ、いまのうちに証券口座を開き、仕組みを整えておくのが賢い準備と言えるでしょう。

減税は政府が一時的にくれる追い風に過ぎません。その風を一瞬で消してしまうのか、それとも一生消えない資産に変えるのか、選ぶのはあなた自身なのです。


藤村哲也 ライジングブル投資顧問株式会社 代表取締役


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■プロフィール 藤村哲也 ライジングブル投資顧問株式会社 代表取締役
fujimura_tetsuya
千葉県出身。横浜市立大学経営学科卒業後、1990年に太平洋証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。個人・法人の資産運用を担当し、バブル崩壊後の市場を第一線で経験する。のちに本社投資情報部でプラント・機械・IT・半導体など幅広い業種を担当し、年間数百件におよぶ企業取材を通じて成長株分析に強みを培う。1999年の台湾地震では、TSMCをはじめとする現地半導体メーカーを取材し、アジア市場リスクを日本の投資家へ発信した。
2003年にライジングブル投資顧問株式会社を設立し、代表取締役に就任。「投資を一部の富裕層の特権から、誰もが続けられる生活習慣へ」を理念に、投資助言と教育を融合した“伴走型”のビジネスモデルを追求している。創業21年を迎えた現在も、金融庁登録の投資助言・代理業として行政処分ゼロを継続。700件超の売買助言ログを公開し、“信頼を見せる投資顧問”として、投資家に寄り添った長期的な資産形成を支援している。

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