unnamed
厚生労働省の調査(令和5年度)によれば、管理職に占める女性の割合は課長相当職以上で12.7%に留まっています。今年の4月からは改正女性活躍推進法が施行され、従業員101人以上の企業で女性管理職の比率の公表が義務化となりました。

まだまだモデルが少ないなかで「自分は管理職に向いていないのではないか」と悩む女性が少なくないと、NTTでのべ1000人の人材育成に携わってきた細木聡子氏は言います。

旧来の「男性的なリーダー像」に縛られ、管理職の仕事に価値を感じられず、孤独や行き詰まりを感じることが多い女性管理職が、仕事に自分らしさとやりがいを見出すにはどうすればいいのか? 氏の著書『女性管理職のためのしなやかマネジメント入門 〈信頼〉をつなぐ、チームビルディング』(NTT出版)から再構成してお届けします。


■女性管理職として突きつけられた現実
「あなたがいるとロクなことがない!」

これは、私が管理職になりたての頃、プロジェクトメンバーから投げかけられた言葉です。それも、50名ほどのメンバーほぼ全員から。大規模システム構築プロジェクトで初めてプロジェクトマネージャーを任された私は、自分なりに精一杯がんばってきたつもりでしたから、どうしてそんなことを言われてしまうのだろうと相当なショックを受けました。

当時の私は、初めて任された大きな仕事にやりがいを感じつつも、具体的にどうやってマネジメントをしていけばいいのか、暗中模索の状態でした。管理職に昇格した頃に中小企業診断士の資格も取得しており、経営やマネジメントに関する知識は一定程度持っていたはずでしたが、実際にそれらの知識をもとに具体的な行動をしようと思った途端、どうすればいいのかがわからなくなってしまっていたのです。

また、プロジェクトが新たな技術分野であったこともあり、私ひとりで全てを把握することは難しく、向かうべき方向性を見つけるのにも苦しみました。ミスリードしていることに薄々気づきながらも、メンバーには半ばゴリ押しといった感じで、強引に仕事を進めていたと思います。「リーダーである自分がしっかりと方向性を示すべき」と自分にプレッシャーをかけて、プロジェクトメンバーからの意見に耳を貸そうともしませんでした。

それというのも、私は周りの男性管理職の真似をして、メンバーに対して何から何まで自分ひとりで考えて細かく指示をするというスタイルでマネジメントをしようとしていたからです。なにしろ周囲に女性の管理職が一人もおらず、リーダーシップといえば、チームをぐいぐい引っ張っている男性管理職の姿しかイメージできませんでした。

当然、プロジェクトの進捗は滞り、トラブルも続出です。クライアントから毎日のように電話で怒鳴られる日々が続き、今から考えると、自分の立場や周りからどう見られているかに意識が及ばず、自分のことしか考えずに行動していたように思います。マネジメントの仕事は辛いだけで、面白くない、自分には向いていない。そんなことばかりを考え、メンタルダウン寸前まで追い込まれてしまいました。

■リーダーシップはひとつじゃない
そんなとき、先輩社員のある一言がきっかけで、自分の言動を振り返ることができました。「もっとメンバーや周りの人たちを信頼してみては。もっと周りに助けを求めて、一緒に方針を考えて行けばいいんだよ。」

当時の私は「リーダーとは、チームの全てのことについて的確に指示を出して部下を動かす人。常に正しい答えを導きだす責任がある。」と思い込んでいたため、先輩の言葉を聞いて、「メンバーに助けを求めたりして、リーダーとしての役目を果たせるのか!」と意表を突かれつつも、一筋の光が見えたような気がしたのです。

これをきっかけに、私は自分のリーダーシップスタイルを見直しました。まずメンバーに頭を下げてこれまでの対応について謝り、「どうにかしてこの状況を打開する策を一緒に考えて欲しい、力を貸して欲しい」と話をしました。この言葉をきっかけに、徐々にメンバーとの信頼関係ができはじめ、その後、メンバーから「あなたがいてくれて良かった。あなたのためにがんばります」と言ってもらえたのです。

管理職という仕事は、他人にこんな風に言ってもらえる仕事なんだ。私はこのとき、初めてマネジメントの仕事に大きな感動とやりがいを見出しました。

■管理職自身のはたらきやすさ
組織で働く管理職のマネジメントについては、すでに沢山の理論や方法論があります。とはいえ、自分らしいマネジメントを確立できているかと問われたら、自信をもってイエスと言える人は案外少ないかもしれません。しかし、これからの管理職にとって、自分らしいマネジメントを確立することは大変重要です。

管理職という仕事の大部分は、人材マネジメント。会社を動かしているのは「人」なのです。その人がその人らしく最も力を発揮できるパフォーマンスを引き出してこそ、チームの成果は上がり、会社は成長します。それは管理職自身も同じではないでしょうか。ビジネス書に書かれた理想のマネジメントの形に自分をはめ込もうとするのではなく、まず自分の強みと弱みを知り、自分自身の活かし方を知ってこそ、人の活かし方も見えてきます。

■視点を切り替えてチームをつなぐ
私は一度昇格試験に落ち、六年後に二度目の試験で合格したのですが、何が変わったのかを考えてみると、それは「視点」だったと思います。それまでの自分は、「こんなにがんばって働いている私を、会社はなぜ認めてくれないのか」という「自分視点」からの不満でいっぱいでした。

しかし、会社は人によって成り立っており、価値を創造することで社会貢献する組織であると理解できたとき、視点が「チーム視点」に切り替わりました。「私が成果を出す」というところから、「集まる人の力を活かして成果を出す」というところへ視点が動いたのです。

管理職は、自分一人で成果を出すのではなく、任された部署でチームとして成果を出すことが仕事です。そのためには、大きく次の2点が必要になります。

(1)チームが会社全体から何を求められているのかを把握すること。
(2)チームのメンバーひとり一人の強みと弱みは何か、それがどのように組み合わさることで、チームとしての力が最大化するのかを考えること。

視点が切り替わってからは、組織という枠組みの外側から自分という人物も俯瞰できるようになりました。今、私は会社から何を求められているのか、今できることで利益につながることは何なのか。そう考えられるようになると、それまでの仕事がまるで別世界のように見えてくるものです。

そして、この「チームの視点」をメンバーに伝え、バラバラの個人の集まりを「チーム」へと育ててゆくのが管理職の重要な役割なのだと思います。

■チームをつなぐ情報伝達
共通の目標を持って集まっているグループこそが「チーム」であり、チームづくりとは、すなわちメンバーの目標の共有を図るプロセスそのものです。しかし、会社の中で自分の仕事がどのような位置づけにあり、どのような役割を担っているのか、個々の社員は案外わかっていないものです。会社の目標と社員の仕事をつなぎ、個々の仕事がどのように会社や社会に貢献するかを伝える、つまり情報を伝達することも、管理職本来の役割です。

情報伝達には2つの方向があります。1つは会社(経営)から社員へのベクトルです。経営目標やミッションをそのまま伝えるのではなく、その社員の状況やスキルに合わせたわかりやすい言葉に翻訳して伝えることが求められます。

もう一つは、社員から会社へのベクトルです。現場で得られる情報やアイデアを、会社の目標に照らして判断し、適切に経営層へ伝えていく。現場と会社をつなぐ役割です。

変化が激しく、業務も複雑化している今の時代、リーダーが細かく指示を出す「指示型」のスタイルが必ずしも合っているとは限りません。むしろ、メンバーの力を最大限に引き出し、全員の参加のもとに方向性を決め、一人ひとりの仕事がスムーズに進むように支援していく「支援型」のリーダーシップスタイルがマッチしているのではないでしょうか。

管理職というポジションに悩んでいる方には、ご自身を型にはめることなく、自分らしさを活かしたマネジメント力の発揮というポジティブな気持ちで、自分らしいリーダーシップのあり方を探していただければと思います。


細木聡子 株式会社リノパートナーズ代表取締役・中小企業診断士・しなやか経営コンサルタント


【関連記事】
■食料品の消費税「実質ゼロ」で家計はいくら浮く?専門家が教える、減税分を"消えないお金"に変える方法(藤村哲也 投資顧問助言業)
https://sharescafe.net/63377235-20260729.html
■なぜ「1日30分」の継続が「毎日全力」より早く終わるのか?挫折しない目標達成法 (滝川徹 時短コンサルタント)
https://sharescafe.net/63366432-20260725.html
■被害6億円超ー。ニセ社長から「至急LINEグループを作って」と経理に来た時に被害は防げるか(都築博志 経営者)
https://sharescafe.net/63368718-20260726.html
■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/62674731-20250930.html
■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/61186482-20240125.html


■プロフィール 細木聡子 株式会社リノパートナーズ 代表取締役・中小企業診断士・しなやか経営コンサルタント
hosoki
技術系企業の女性リーダーが育つ組織づくり専門家。2026年3月までに延べ9,082名の育成に携わり、残業ゼロで成果2倍を実現するなどの実績を持つ。筑波大学卒業後、NTTに入社。大規模システム開発や人材育成に携わる中で、個々人の状況に応じた育成施策の展開など、現場経験をもとにしたマネジメント手法を確立。延べ1,000名以上の育成経験を経て、女性管理職の活躍には男性と異なるコツが必要であると痛感し、2018年に株式会社リノパートナーズを設立。独自の「しなやかマネジメント(TM)」を体系化する。「人には無限の可能性がある」という信念のもと、全ての人が自分らしく安心して成長できる社会づくりのために尽力している。




この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。