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生成AIの普及で情報収集のあり方が激変する中、「展示会への出展は時代遅れ」という声も聞かれます。しかし、「デジタル化が進むほど、対面での信頼構築や、五感を通じた一次情報の価値はむしろ高まっているんですよ。」そう語るのは、1,300社以上の支援実績を持つ展示会営業コンサルタントの清永健一氏。同氏が監修した『展示会白書』から、「出せば売れる」から「設計して臨む」への転換といった、AI時代に最大の成果を上げる展示会戦略を再構成してお届けします。

■展示会は巨大なエコシステムである
展示会と聞くと、製造業のようなダイナミックで見栄えのする業界がメインのような気がしてしまいますよね。しかし、展示会という世界を覗いてみると、実に多様な業界の熱気が感じられることに驚かされます。製造業から食品、ファッション、そして最新のIT技術まで、私たちの経済を支えるあらゆる分野で展示会は開催されているのです。

日本展示会協会の分類によると、国内の展示会は大きく「生産財関連」と「消費財関連」に分かれます。2024年の実績では、生産財関連が444件、消費財関連が483件と、ほぼ均衡した状態にあります。これは、展示会がBtoB(企業間取引)とBtoC(消費者向け取引)の双方、あるいはその中間領域において、欠かせないマーケティング手法として定着していると言えるでしょう。

近年、特に目覚ましい勢いで増えているのが「IT・AI分野」の展示会です。調査時点では2023年には66件だった開催数が、2025年には84件にまで増加する見通しで、わずか2年で127%という驚異的な伸びを見せています。あらゆる産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI活用が叫ばれる中、最新技術を直接目で見て、触れて、確かめたいという需要が爆発的に高まっているのです。

しかし、ここで興味深い現象が起きています。開催件数が増えれば増えるほど、一つの展示会あたりの来場者数が分散してしまうという課題です。IT・AI分野では、テーマが細分化され、似たような展示会が次々と立ち上がった結果、来場者の選択肢が増え、以前ほど一つの会場に人が集中しにくくなっている側面があります。

その一方で、工作機械の祭典である「JIMTOF」や、エネルギー分野の「スマートエネルギーWEEK」のように、特定の産業に深く根ざした伝統的な大型展示会は、今なお過去最大規模の来場者数を記録し続けています。つまり、今の展示会業界は「テーマの多様化・分散化」と「特定分野での圧倒的な巨大化」という、二極化トレンドの中にあると言えるでしょう。

また、展示会の価値は単なる企業間の収支にとどまりません。例えば「インテックス大阪」で開催される展示会が地域経済に与える波及効果は、年間で640億円を超えると算出されています。宿泊、飲食、交通といった周辺産業への影響を含めると、展示会は一つの巨大な「経済活性化装置」として機能しているのです。もちろん、出展した企業の約95%が「新規顧客の獲得」を目的に掲げ、そのうちの4割が実際に確かな手応えを感じているという調査結果もあり、ビジネスの現場としての有効性は極めて高いレベルで維持されています。

■グローバル主催企業による新たな波
次に視点を変えて、日本国内で開催される展示会の「主催者」に注目してみましょう。実は今、日本の展示会市場に大きな変化が起きています。それは、海外の大手展示会主催企業による日本進出の加速です。

特に2019年以降、ドイツやイギリスを拠点とするグローバル企業が、日本で大型イベントを次々と立ち上げています。例えば、ドイツのケルンメッセやメッセ・デュッセルドルフといった世界的な主催者が、家具、菓子、ワイン、酒類といった分野で、日本独自の展示会をスタートさせました。また、イギリスのクラリオンイベントも防衛・安全保障の分野で日本へ進出しているのです。

なぜ、彼らは日本市場をこれほどまでに重視しているのでしょうか。それは、日本が依然として質の高い技術や製品を持ち、アジア市場へのゲートウェイとしての魅力、そして成熟した購買力を持っていると評価されているからです。近年は国内で日本の衰退を嘆く声がよく聞かれますが、世界は全く違う評価をしています。

こうしたグローバル主催企業の日本進出は、国内の出展企業にとっても大きなチャンスです。海外まで多額のコストをかけて出展しに行かなくても、日本にいながらにして、グローバルな運営ノウハウに基づいた展示会に参加できるのですから、大きなメリットがあります。国内主催者と海外主催者が手を取り合い、同時開催という形で相乗効果を狙う動きが広がっているのも納得です。

■海外展示会活用という新戦略
一方、海外の展示会はどのような状況なのでしょうか。海外展示会と一口に言っても、その性格はさまざまです。ドイツのハノーバーメッセに代表される「製造業系」、アメリカのCESのような「テクノロジー系」、あるいは医療、食品、デザインといった「専門特化型」など、自社の商材に合わせて最適な舞台を選ぶ必要があります。

しかし、いきなり海外の展示会に出展するのは、勇気もいりますし、コストやリスクも小さくありません。言語の壁、物流の手配、現地の規制への対応、そして信頼できる現地パートナーの確保など、超えるべきハードルは山積みです。

そこで、これからの時代の戦略としてお勧めしたいのが、国内の国際展示会を試金石にするというステップアップの手法です。

先ほどお話ししたように、今の日本には海外主催の展示会や、非常に国際色の豊かな国内展示会が増えています。まずはこうした場で、海外から訪れるバイヤーの反応を直接確かめてみるのです。自社の製品のどこが評価され、どこが現地ニーズとずれているのか。どのような質問が飛んでくるのか。それを日本国内にいながら「一次情報」として収集するわけです。

例えば、日本の工作機械見本市である「JIMTOF」では、2022年から2024年にかけて海外来場者数が倍増しました。このように、国内にいながらにして海外との接点は確実に増えています。ここで確かな手応えを掴み、改善点を見極めた上で、満を持して本場の海外展示会に打って出る。この二段構えの戦略こそが、特にリソースの限られた中小企業にとっては、最も現実的で成功確率の高い海外進出の道と言えるのではないでしょうか。

いきなり世界を目指すのではなく、まずは国内で世界の縮図を体感し、そこでの学びを武器にして外へ飛び出す。展示会という場を、単なる発表の場としてだけでなく、世界市場への学習と検証の場として賢く使いこなす姿勢が、これからのビジネスを大きく左右することになるでしょう。

■展示会は変化をチャンスに変える
ここまで見てきたように、展示会産業を取り巻く環境は、業界の枠を超えた広がりに加え、グローバルなプレイヤーの参入、そして海外進出への新たな道筋という、非常にダイナミックな変化の中にあります。

IT・AI分野のように急成長する領域もあれば、伝統的な産業が国際化によって再定義される場面もあります。こうした時代の大きなうねりの中で最も重要なのは、展示会をただのイベントとして捉えるのをやめることです。

今の展示会は、自社の立ち位置を再確認し、グローバルなトレンドを肌で感じ、まだ見ぬ顧客との深い信頼関係を築くための、高度な戦略的チャネルへと進化しています。国内で出会うグローバルな機会を逃さず、そこで得た知見を糧に海外へと翼を広げていく。その一連のプロセスを、いかに自社の成長ストーリーとして描き、設計していけるか。

展示会という「場」には、私たちがまだ気づいていない無限の可能性が秘められています。この変化の波を楽しみ、新たな挑戦の舞台として最大限に活用していくことで、中小企業は世界へと繋がる大きなきっかけを掴むことができるはずです。


清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント


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【プロフィール 清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント】
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神戸大学経営学部卒。展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」など取材多数。支援実績は1300社超。ほぼ毎週東京ビッグサイトに出没している。
NHKラジオ総合第一で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関してテレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。
著書『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』、『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に1回しか営業しない』など合計7作はいずれもamazon部門1位を獲得。奈良生まれ、東京在住。

公式サイト https://tenjikaieigyo.com
X:https://x.com/tenzikai @tenzikai


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