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「大きな目標達成には時間がかかる」。これは本来、至極当たり前のことでしょう。しかし、楽にできるノウハウやタイパ重視の考え方が蔓延する現代において、つい忘れられがちな事実でもあります。

時短コンサルタントの滝川徹氏は、この事実を前提とした上で、充実した人生を送るには、身につけるべきスキルを見極め、しっかりと時間をかけて習得する必要があると説きます。一方、そこに時間と努力を「オールイン」するのではなく、たった1日30分を続けることで、人生のバランスを取りながら、無理なく地道にスキル習得を続けられるといいます。この超現実的な目標達成法、「10年思考」とは?

この記事では、人生のほぼすべての時間を物事の達成に費やす「オールイン戦略」が社会人にフィットしない理由について、『10年思考でうまくいく――自己投資を実現するスキル戦略』(滝川徹・パンローリング株式会社)から再編集してお届けします。



■成功の本質と目標達成
努力はどうすれば続けられるのか。必要となるマインドセット(考え方)を説明していきたい。

この話をするにあたっては、多くの人が持っている、成功するプロセスへの誤ったイメージ。これを払拭することからはじめる。まずは2025年、メジャーリーグでプレーした全選手の1%強しか選ばれない、米国野球殿堂入りを果たしたイチロー(鈴木一朗)氏の話からはじめよう。

イチローは3歳から野球をはじめ、7歳頃から父親と本格的に練習をはじめた。午後3時30分から7時まで練習し、夕食と宿題のために一度帰宅。その後、近所のバッティングセンターで閉店の23時まで練習した。彼は年間360日、これを行った。こうした尋常ではない努力を、学生時代はもちろん、プロになってからも続けた。

オリックス時代は練習後、チームメイトが歓楽街に消えた後も、長い間バッティングケージに一人残りフォームの研究をした。マリナーズ時代はチームメイトのブレット・ブーン選手から「あいつを見てるだけで疲れてくるよ」と言われるほどの練習量だった。イチロー選手はあるインタビューで「野球のために命を削る覚悟がある」とまで語っていた。彼の輝かしい功績は、こうした尋常ではない努力を続けた結果なのである。

私たちはいわゆる「成功」であったり、目標を達成するためには(イチロー選手ほどでないにしろ)、尋常ではない努力を毎日続ける必要があると思いがちだ。以前読んだ、あるサラリーマンユーチューバーの本には、彼や彼以外のインフルエンサーの1日の使い方が紹介されていたのだが、皆まさにイチロー的な努力をしていた。週末はもちろん、平日も本業以外に4〜5時間は副業に充てているという。こうした話を聞かされれば、誰だってチャレンジしようとは思わないだろう。

ここで伝えたいのは、目標を達成する方法はほかにもある、ということだ。

■大人になっての全ベット戦略
私自身は社会人になり、勉強に取り組めずに悩んだ経験からこのことを学んだ。簿記3級に落ち続けて悩んでいたところ、たまたま本屋で見つけた1冊の本が私の人生を変える。それが『「1日30分」を続けなさい!人生勝利の勉強法55』(古市幸雄著、マガジンハウス)だった。

この本のメッセージはタイトルの通りで、とにかく勉強を1日30分でいいので続けなさい。1日30分でも、5年、10年と続ければ、勉強しない人と比べると大きな差になる、というものだった。

そのメッセージはわかりやすく、説得力があった。なにより、1日30分ならできそう。そう思えたのが大きかった。

これをきっかけに、私は仕事終わりに近くの喫茶店で勉強して帰るようになる。喫茶店という環境、そして、1日30分という「これならできそう」と思える目標のおかげで、私は気づけば無理なく勉強ができるようになっていた。

その後、見事に(?)簿記3級に合格。簿記2級はなんと一発で合格し、続けてビジネス実務法務検定も3級、2級と取得。TOEICも935点を叩き出すなど、快進撃が続いた。私はようやく、勉強するスキルを身につけることに成功したのだ。

この話から私が伝えたいのは、毎日30分など、短い時間をコツコツと積み上げていく目標達成法もあるということだ。今思えば、昔の私が勉強に取り組めなかったのは、目標達成のためのアプローチの誤った認識にあった。私は目標を達成するためには、(わかりやすく言うと)イチローのように努力しなければならない。そう思いこんでいた。勉強するなら、少なくとも2時間か3時間など、ある程度まとまった時間勉強すべき。それができないなら、やらないほうがマシ。そんな「0か100か」の思考だったように思う。

大学受験のときはそれでよかった。あの頃は人生の全てを勉強に注げたので、毎日数時間、イチローのように勉強していた。そんな成功体験もあり、私はおそらく無意識に、勉強するとはそういうものだと思いこんだ。だから、まとまった時間勉強できないなら、やらないほうがマシ。そんな一種の完璧思考に陥り、勉強できなかったのだ。

こうしたイチロー的努力、すなわち、自分のリソースを全投入する(英語でAll-In「オールイン」と言う)やり方を私は「オールイン戦略」と呼んでいる。昔の私のように、目標達成するにはこの戦略しかない。そう思いこむと、ほとんどの人はプレッシャーが大きくなりすぎて、動けなくなってしまう。若いときの私のように「0か100か」の思考となり、行動できなくなるのだ。それなら、1日たった30分でもいい。確実に目標に向かって前進し続けるほうがよくないだろうか?というのがここで私が伝えたいことだ。

1日たった30分で目標を達成できるのか? 人生を変えられるのか? そう感じる人もいるかもしれない。結論から言えば、十分可能だ。そのかわり、言うまでもなく時間(期間)は必要だ。どのくらいかは何を成し遂げたいかにもよるが、基本、10年はかかる。そう考えてほしい。

「えっ、10年もかかるの?」と思ったかもしれない。でも、冷静に考えてほしい。10年あれば、無理なく人生を変えられるのだ。もし今のままオールイン戦略にこだわり続けたら、人生を変えることは想像どおり困難になる。

それよりは、10年かかってもいい。毎日30分努力する。私はこれを「10年思考(戦略)」と呼ぶが、これで人生を確実に変えられるなら、そう悪い話ではないのではないだろうか?


滝川徹 時短コンサルタント


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【プロフィール 滝川徹 時短コンサルタント】
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1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒。国内トップの大手金融機関で毎日定時に帰る現役会社員。著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』(日本実業出版社)、『気持ちが楽になる働き方』(金風舎)のほか、『細分化して片付ける30分仕事術』(パンローリング)は台湾で翻訳出版された。
長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みで全国表彰、2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その後は順天堂大学や創業手帳株式会社での講演・研修をはじめ、時間管理をテーマに講師として活動。国内最大級のスキルシェアプラットフォーム「ストアカ」の上位2%のトップ講師に選出される。Yahoo! ニュースへの執筆や、YouTubeで動画配信など幅広く活動中。




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