![]() 時短コンサルタントの滝川徹氏は、この事実を前提とした上で、充実した人生を送るには、身につけるべきスキルを見極め、しっかりと時間をかけて習得する必要があると説きます。一方、そこに時間と努力を「オールイン」するのではなく、たった1日30分を続けることで、人生のバランスを取りながら、無理なく地道にスキル習得を続けられるといいます。この超現実的な目標達成法、「10年思考」とは? この記事では、滝川氏によるアドバイス事例をもとに「先延ばし」という現象を数学の方程式のように解く過程について、『10年思考でうまくいく――自己投資を実現するスキル戦略』(滝川徹・パンローリング株式会社)から再編集してお届けします。 ■ケーススタディ ・相談者:Aさん(フリーランス) ・相談内容:ライフスタイルの改善(出社の必要がないため、不規則な生活になりがち) 寝る時間が遅くなり、朝方にシフトできない。もっと早く寝ればよいのだが、シャワーを浴びてから寝たい。ぐずぐずしているうちに遅い時間になってしまう。 ・本人が自覚している先延ばし要因:シャワー まず一番最初に考えるべきは「何が障害になっているのか」を特定することだ。衝動の脳が何に対して「面倒くさい」と感じているのか。これを探る作業からはじめる。 ・作業:現状の掘り下げ〜自覚 Aさんはシェアハウス住まいでシャワーは共用。移動するには、共用廊下を通らないといけない。共同生活のマナーとして、下着などでは行けない。わざわざ着替えてシャワー室に移動するのが面倒くさい。また、シャワー室があまり衛生的でなく、これも気が進まない要因となっていた。 このように話を聞いていくと、問題の真因は明らかになっていく。Aさんの場合は、環境の問題が大きいことがわかる。 ・解決策への選択肢のリストアップ では、どうすれば環境に対処できるか。考えられるのは、銭湯/ジム/引っ越しなど。近所のジムには、シャワーがあるという。ならばジムでシャワーを浴びるのはどうか。同じ着替えでも、気分が異なるのではないか。私たちはそんな「仮説」を立てた。 仮説が正しいかを確認するには、実行してみるしかない。後日実際に試してみたところ、ジムでシャワーを浴びて帰ってくるようになったと報告があった。仮説は正しかったようだ。 そんなことは、ひとりでも思いつくだろと思ったかもしれない。だが、ここは思考の練習である。この話で注目してほしいのは、問題を解決するまでのプロセスだ。(1)まず最初に何が障害なのかを特定し、(2)どうすれば障害を取り除けるか。仮説を立てて検証していく。 改めてプロセスをふりかえってみたい。このケースでは、次の2つが障害だった。 (1)シャワー室への移動(着替えるのが面倒くさい) (2)シャワー室の衛生問題 障害を特定したら、次はそれを取り除く仮説を立てる。仮説を立てるときのアプローチは大きく言って2つある。ひとつは、障害自体を取り除く方法を考えること。今回問題となっていたのは、シャワー室への移動と衛生問題。どちらも環境の問題が大きいので、別の選択肢を考える。Aさんにはジムという選択肢があった。 まずはこのように問題を取り除き、現実レベルで別の手段を探る。もちろん代替手段が見つからなかったり、代替手段が実行できないときもある。銭湯が近所にない、引っ越しには時間もお金もかかるなど。Aさんはたまたまジムという選択肢があったが、もしなかった場合どうするか。 ここで2つめのアプローチが活躍する。「心理的ハードルを下げる方法を考える」だ。 ■心理的ハードルを下げる方法を考える Aさんのケースで現実レベルで代替案がなければ、次のような提案をしただろう。 ・「着替え」と「シャワー室への移動」を分ける ・事前にシャワー室を簡単に掃除する 心理的ハードルを下げる方法には原理原則が存在する。そのひとつは「行動単位を小さくする」ことだ。 Aさんの場合、シャワー室への移動という動作は「着替え」と「移動」の2つの行動に分けられる。まず着替えがあり、そこで「着替えなければいけない」という面倒くささが生まれる。その後、人目に触れる共用廊下を歩いて移動する、という面倒くささも生まれる。 このことからわかるのは、シャワー室への移動という行為には、2つの面倒くさいが混在していることだ。これを分割して、面倒くさいをひとつずつにする。そうすれば、心理的ハードルが下がって行動できる可能性がでてくる。 具体的には、まず着替えだけを行う。これだけなら、できる可能性が高い。そのうえで、別のタイミングでシャワー室へ移動するのだ。このように2つの行為を別物として、ひとつずつを別のタイミングで分割して取り組むようにする。そうすれば一つひとつの心理的ハードルは下がり、実行できる可能性が高まる。 ならば、2つめの掃除の話はどうか。シャワー室が汚くて「入りたくない」と感じるAさんの心理的抵抗に着目する。シャワー室が汚いと感じたとき、Aさんの衝動の脳(考えるのではなく自動的・反射的に反応する脳の機能)は「汚いから入りたくない」と感じる。これが心理的ハードルとなる。どうすれば、上がってしまったハードルを下げられるのかを考える。 ひとつは、シャワーに入る前に簡単に掃除をすることだ。たとえば日中だったり、シャワー室に入る直前に簡単に掃除する。こうして事前に掃除をしておけば、「汚い」という心理的抵抗は薄まる。このように仮説を立てたら、仮説が正しいか実行するのが大切だ。もちろん、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもある。うまくいかないときは、再度同じプロセスで考えていく。特定した障害は間違っていないか。どうすれば障害を取り除けるか。 例えばシャワー室の掃除は、「汚いから入りたくない」という観点から考えれば、確かに心理的ハードルは下がる。とはいえ、毎回掃除していると、そのうちに別の心理が生まれるかもしれない。「共同生活なのに、なぜ自分が掃除をしなければならないのか」と。そのときは、みんなに協力を仰いだり、シェアハウスの管理者に改善を打診することも解決策になるだろう。いずれにしても、再度考え、仮説を立て、それを確認する。これを問題が解決するまで繰り返していく。 私は先延ばしの問題は数学の方程式を解くことと似ていると考えている。解くべき問題があり、原理原則を使って解決していく。この点が同じだからだ。 滝川徹 時短コンサルタント 【関連記事】 ■イチロー的な努力をマネするな。凡人が成功するための「1日30分」継続術 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63440009-20260826.html ■サンドウィッチマンのM-1優勝に学ぶ「10年思考」―AI時代こそ必要な“地道な努力”の正体 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63440009-20260826.html ■「楽して成功」は幻想だ。AI時代も地道なスキル磨きこそが唯一の近道である理由 (滝川徹 時短コンサルタント) https://sharescafe.net/63378885-20260730.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール 滝川徹 時短コンサルタント】 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒。国内トップの大手金融機関で毎日定時に帰る現役会社員。著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』(日本実業出版社)、『気持ちが楽になる働き方』(金風舎)のほか、『細分化して片付ける30分仕事術』(パンローリング)は台湾で翻訳出版された。 長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みで全国表彰、2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その後は順天堂大学や創業手帳株式会社での講演・研修をはじめ、時間管理をテーマに講師として活動。国内最大級のスキルシェアプラットフォーム「ストアカ」の上位2%のトップ講師に選出される。Yahoo! ニュースへの執筆や、YouTubeで動画配信など幅広く活動中。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



