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連休が終わって久しぶりに職場に向かう朝、「行きたくないな」と感じる。職場に不満があるわけでも、辞めたいわけでもない。体調だって悪くない。それでも、長い休みのあとはなんとなく足が重い。これは多くの大人にとって、覚えのある感覚だと思います。

子どもが夏休み明けに「学校に行きたくない」と感じることはよくあります。驚くかもしれませんが、親を信頼しているからこそ、嫌なものを嫌だと言ったり、気が重い日に弱音を吐ける場合もあります。休み明けに弱音を吐くのは、大人も同じです。

ただ、大人と子どもでは置かれている状況が違います。大人なら、自分で今日は休むと決めたり、働き方を変えたり、どうしても合わなければ転職を考えたりできます。子どもはそうはいきません。学校へ行くか休むかも、本人だけでは決められないことが多いでしょう。実際に、子どもに「学校に行きたくない」と言われると、親は驚き、とまどいます。

つい「行くべき」か「休ませるべき」かと二択で考えてしまいがちですが、実はもう少し丁寧に判断してあげる必要があります。もし、夏休み明けに子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、親はどう返答するべきなのでしょうか? 25年以上不登校や引きこもり問題に携わる公認心理師の立場から考えてみたいと思います。

■「ちゃんと行くべき」「休ませるべき」の二択ではない
私たち大人も、仕事へ行きたくないと思っただけで、いつも同じ判断をしているわけではありません。ただ休み明けで気が重いだけなら、「まあ行くか」と家を出ることもあるでしょう。

一方で、熱がある。睡眠が十分とれていない。職場の人間関係に悩んでいる。仕事内容が合わない。そんな事情があれば、無理に出社せず、ひとまず休むという判断も大切です。同じ「行きたくない」でも、普段の自分と比べながら判断しています。

子どもを見るときも同じです。普段から「宿題やりたくない」「今日は学校行きたくない」とよく言う子の、いつもの調子なのか。嫌なことがあってもほとんど口にしない子が、今回に限って「行きたくない」と言ったのか。ほかにもいろいろな状況があるでしょうが、同じ言葉でも状況によって対応は変わります。

■見るのは「行きたくない」と言ったかより、普段との違い
言葉だけでなく、その朝の様子も手がかりになります。いつも通り朝ごはんを食べているか。顔色はどうか。お腹が痛いなど、体の不調はないか。昨夜は眠れていたか。夏休み中、友達と楽しそうに遊んでいたのか。最近、以前はよくしていた友達の話をしなくなっていないか。宿題が終わっていないことを気にしていないか。

一つ一つをチェックして判定するという話ではありません。普段一緒に暮らしている家族だから分かる、「いつもの様子」との差を見るということです。一方で、我慢して「行きたくない」と言わずに抱え込む子もいます。だからこそ、「言った・言わない」よりも、普段の様子との違いが手掛かりになります。

私はカウンセラーなので、子育て中の方から「子どもが行きたくないと言っています。休ませた方がいいでしょうか」と質問されることがありますが、その一言だけでは判断できません。普段はどんなお子さんなのか。最近、何か変わったことはないか。背景がわからないと判断ができません。

■忙しい時に「学校に行きたくない」と言われるとネガティブな反応をしやすい
私が相談を受けていると、「学校に行きたくない」と訴えるのは、前日の夜か当日の朝であることが多いです。特に夏休み明け初日の朝は、親御さんもバタバタしてあわただしい状況でしょう。

毎日の昼ごはんの支度も今日まで。子どもは学校へ、自分は仕事へ。ようやく普段の生活に戻れる。そう思っていた朝に、子どもが突然「学校、行きたくない」と言い出した。学校への連絡もしなければならない。自分の出勤時間も迫っている。下の子の支度や家族の介護などが重なっている家庭もあるでしょう。

そんな状況で、「昨日まで普通だったじゃない」「とりあえず着替えて」と口から出るのは、それほど不思議なことではありません。親に愛情がないからではなく、考える余裕がほとんどない中では、つい強い口調になることもあります。

■子どもは、親の言葉だけなく表情も見ている
子どもは親の言葉を聞いているだけではありません。親の態度も注意深くみています。

例えば、子どもを休ませる場合でも、うんざりしたような顔で「休んでいいよ」と言われる場合と、心配そうな表情で「休んでいいよ」と言われる場合では、お子さんの受け止め方も変わります。親自身も気づかないうちに時計ばかり見ていたり、「なんで今日なの」という表情をしていたりすることがあります。

親の反応を見て子どもが反応します。その子どもの様子を見て、また親も反応します。家族カウンセリングでは、このようなお互いの反応(相互作用)を見ながら、どこを変えるとやり取りが変わるかを考えます。

■理由がわからなくても「学校に行きたくない」ことがある。
心配になると、理由を知りたくなるのも自然です。「どうして行きたくないの?」「友達と何かあった?」「先生に何か言われた?」、本人にも理由がよく分からないことがあります。子どもが話したい場合はじっくり聞いてあげましょう。もし理由を言いたくないようなら、無理に問い詰めたり、「理由がないならサボりでしょ」などと決めつけないことも大切です。

文部科学省の調査では、「最初に学校に行きづらい、休みたいと感じ始めたきっかけ」について、小学生の26%、中学生の23%が「きっかけが何か自分でもよくわからない」と回答しています(参考:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要 文部科学省 2021/10/06)

私が運営する「家族なんでも相談室」でも、不登校経験者110名にアンケートを実施したところ、「不登校になったきっかけ」について11.8%が「わからない」と答えています(経験者110名に聞く 不登校のリアル1「不登校のきっかけ」そして「気づき」 2026/08/10)。本人がその場で理由をうまく言葉にできなくても、不思議ではありません。

■「休ませる」「行かせる」は、一言だけでは決められない
夏休み明けには、「無理に学校へ行かせない方がいい」という意見もあります。一方で、「一度休ませたら、そのまま行きにくくなるのでは」と心配する保護者もいます。私は、どちらか一方に決めることはできません。休ませたことが、その子にとって最善の日もあります。送り出す判断をする場合もあるでしょう。

私は25年以上、不登校をはじめとした子どもや家族の相談に関わってきました。その私でさえ、実際にその場になったとき、子どもにどんな声をかけるかを今ここで想像して答えろと言われても無理です。そのときの子どもの様子や夏休みの過ごし方、夏休み前の学校の様子など、さまざまなことに思いを巡らせて声をかけるでしょう。どんなに良い声かけだと思っていても、後になって「もっとこう言っておけばよかった」と反省するはずです。

■完璧な対応より、「うちならどうなるか」を想像しておく
まもなく夏休みが終わります。子どもに「学校に行きたくない」と言われたとき、保護者がどう反応するかは、その後のやり取りにも影響します。

ぜひ、今のうちに想像しておいてください。新学期の朝、うちの子が「学校に行きたくない」と言ったら、自分はどんな顔をするだろう。どんな様子なら「今日はちょっと違うな」と感じるだろう。普段一緒に暮らしている中で、すでに知っている「いつものうちの子」を少し思い出すだけで十分です。突然「学校に行きたくない」と言われて動揺したり、ネガティブな反応をしてしまったりするのを、少し減らせるかもしれません。

わかっていてもうまくいくとは限りません。私たちにとって、「わかること」と「できること」は別です。実際には、わかっていても子どもに望まない反応をしてしまうことがあります。そんなときは、「私も、わかっていてもできないことはある。子どもも、頭で考えた通りには動けない苦しさがあるのかも 」と想像するきっかけにもなります。

親子の関係は、子どもの反応を見ながら親も変わり、親の反応が変われば子どもの反応もまた変わっていきます。子どもの様子を見て、自分の反応にも少し意識を向ける。それが、夏休み明けの親子のつらさを軽くする一つの手掛かりになります。


吉田克彦 公認心理師・精神保健福祉士・家族問題戦略家


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【プロフィール 吉田克彦 公認心理師・精神保健福祉士・家族問題戦略家】
yoshida
合同会社ぜんと代表。大学在学中に子供の不登校や引きこもりに悩む家族を支援するNPO法人の立ち上げ、以降25年以上不登校や引きこもり問題に携わる。東日本大震災では被災地の心理支援にも従事。11年前から働く人の本人や家族のメンタルヘルス支援も行っている。本人が相談に来れない状況で関係者への支援を通した問題解決を得意とする。著書に『「できる」ブリーフセラピー』(金子書房)、共著に『小学校スクールカウンセリング入門』など。現在は「家族なんでも相談室」を運営している。
公式X:https://x.com/denkitiyy @denkitiyy
公式サイト:https://zento.work/

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