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2026年4月、大同生命が中小企業の経営者に行った調査で、新規顧客・販路開拓に取り組む企業の47%が「売上が増えた」と回答した。取り組んでいない企業は22%だった(出典:中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」2026年4月度レポート 大同生命)。

人手不足が叫ばれる中で、新規顧客を増やしたい会社ほど、新規顧客に会いに行っていない。そして、それを解決するには、人を増やすのではなく、時間を生み出すべきだ。

会議では、「新規顧客を増やしたい」「新しい取引先を開拓したい」という話が出る。

ところが会議が終わっても、だれが、いつ、どこへ、何社連絡するのかは決まっていない。そして来週、また同じ議題が出る。こんなことが、あなたの会社でも起きていないだろうか。世間では、新規顧客を増やすには営業の人数を増やすべきだと言われる。しかし私は、増やすべきは人ではなく、新規顧客へ向かう時間だと考える。この記事では、なぜ新規開拓が後回しになるのか、そして人を増やさずに新規顧客へ会いに行くにはどうすればよいのかを考える。

営業の人数が足りないから、新規開拓が進まないのか。必ずしもそうではない。止まっている会社を見ると、「新しい顧客に会いに行く」という仕事そのものが、だれの予定にも入っていないことがある。売上が落ちてから慌てて新規開拓を始めても、すぐに顧客が増えるわけではない。半年後、取引先が一つ減ってからでは遅い。売上が安定しているうちから、新規に向かう時間を確保する必要がある。

人手も時間もない中小企業は、営業担当を採用するまで新規開拓を始められないのか。この記事では、その思い込みをほどき、いまいる人で新規顧客へ会いに行く方法を考える。節電器のレンタルやオール電化の営業に携わってきた経験から考えてみたい。

■顧客を増やしたいのに、だれの予定にも入っていない
会社では今日も仕事が動いている。既存顧客への納品があり、問い合わせに答え、請求書を出し、トラブルにも対応する。ところが、新しい顧客へ連絡する時間だけは、だれのカレンダーにも入っていない。

営業部がある会社でも、同じことは起きる。営業担当者が既存顧客への対応だけで一日を終えれば、新規開拓は後回しになる。「新規は営業の仕事」と切り分ければ、経営者や他の部署も顧客から遠ざかっていく。それでも会社は忙しい。問題に気づきにくい。

新規顧客への連絡を一週間しなくても、明日の仕事が急になくなるわけではない。半年後に取引が一つ終わったとき、その穴を埋める顧客とはまだ会っていない。

の冒頭に触れた調査では、新規顧客・販路開拓に取り組む企業の47%が「売上が増えた」と回答した。取り組んでいない企業では22%だった。

これだけで新規開拓が売上増加の原因だとは言えない。それでも、取り組んでいる企業と、取り組んでいない企業のあいだに差があることは分かる。

一方で、新規顧客・販路開拓に「取り組んでいない」と答えた企業も23%あった。規模の小さい企業ほど、その割合は高い。

納品、採用、資金繰り。今日やらなければ困る仕事が多いほど、まだ売上になるか分からない相手への連絡は後回しになる。だから、新規開拓は「暇ができたらやる仕事」にしてはいけない。暇はだいたい来ない。

■営業を一人増やせば解決するのか
「いまの人数では無理だ」という反論も当然ある。今日の顧客を放って、新しい顧客のところへ出るわけにはいかない。営業経験のない社員に、突然商談を任せることもできない。

そこで「営業を一人採用しよう」と考える前に、一つ確認すべきことがある。その人に、何をしてもらうのかである。

新規開拓を「見込み客を探す」「連絡する」「アポイントを取る」「商品を説明する」「提案する」「契約する」という一連の仕事として考えると、全部できる営業担当者が必要になる。

すると採用の難易度は上がり、その人が来るまで新規開拓は止まる。だが、本当に全部を一人がやる必要があるだろうか。

例えば、見込みの顧客を50社探すところまでは別の社員でもできる。最近ではAIもかなり使える。

最初の連絡だけを誰かが担当することもできる。商談だけ社長が出てもよい。紹介をお願いする相手を毎週3人決めるだけでもよい。役割を分ければ、営業経験がなくても新規顧客に触れられる。

新規開拓を「営業担当者の仕事」にするのではなく、仕事を小さく分けて、会社の予定の中に置く。この方が、人を一人採用するより早く始められる。

■松下幸之助は問屋ではなく、直接店へ行った
人数を増やす前に、顧客への届き方を変えた例がある。

1923年、松下幸之助は砲弾型の電池式自転車ランプの製造に取りかかった。しかし当時の電池ランプは評判が悪く、問屋を回っても扱ってもらえなかった。そこで、問屋を説得し続けるのではなく、小売店に現物を預け、実際に点灯させてもらう方法に変えた。商品そのものを見てもらったのである。

その後、販売が伸び、一人では回りきれなくなってから外交員を増やした。先に営業人数をそろえたわけではない。「どうすれば相手に届くのか」を先に見つけ、人を増やしたのはそのあとだった(参考:松下幸之助について 松下資料館/自転車ランプの開発・販売 月刊PHP 2008/05)。

筆者自身も、商品によって顧客への行き方を変えてきた。節電器のレンタルでは、一般家庭への飛び込みが最も売れた。オール電化では飛び込みをやめ、電話で約束を取ってから訪問した。同じ営業でも、売り方は同じではない。営業人数を考える前に、まず「どこへ、どう行けば話を聞いてもらえるか」を見つける必要がある。

■増やすのは、人ではなく「新規に向かう時間」
紹介だけで必要な売上が安定している会社なら、無理に新しい方法を増やす必要はない。問題なのは、「顧客を増やしたい」と言いながら、新しい顧客へ向かう仕事が会社のどこにも存在していない場合だ。この状態では、どれだけ会議で「新規」と言っても、現場の予定は変わらない。

そんな会社が最初に決めることは、営業を何人採用するかではない。決めるのは、時間と行動である。例えば、「毎週火曜日の午前中は、新しい会社への連絡に使う」「毎週10社だけ候補を出す」「紹介をお願いする相手を毎週3人決める」。それくらいでもよい。

新規開拓を大きな仕事として考えるから、「人が足りない」という結論になる。小さな仕事に分ければ、いまいる人でも始められることがある。

顧客を増やしたいのなら、まず増やすべきなのは営業の人数ではない。会社の一週間の中に、新しい顧客へ向かう時間をつくることである。


都築博志 株式会社グリーンイノベーションズホールディングス代表取締役


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■プロフィール 都築博志 株式会社グリーンイノベーションズホールディングス代表取締役
tsuzuki
IT、建設、人材、金融領域で5社のグループ会社を経営し、23年間で累計売上816億円超、最高年商76億円を達成。エンジェル投資23社。数々の新規事業と失敗を経験しながら、挑戦する人を応援する経営者コミュニティ「BIZFIT」を運営している。


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