![]() まだまだモデルが少ないなかで「自分は管理職に向いていないのではないか」と悩む女性が少なくないと、NTTでのべ1000人の人材育成に携わってきた細木聡子氏は言います。 旧来の「男性的なリーダー像」に縛られ、管理職の仕事に価値を感じられず、孤独や行き詰まりを感じることが多い女性管理職が、仕事に自分らしさとやりがいを見出すにはどうすればいいのか? 氏の著書『女性管理職のためのしなやかマネジメント入門 〈信頼〉をつなぐ、チームビルディング』(NTT出版)から再構成してお届けします。 ■自分らしくない「理想のリーダー」を演じる弊害 かつての私は、周りにいる男性管理職の真似をして、「あるべき管理職像」に自分を無理やりはめ込もうとしていました。リーダーといえば男性ばかりという環境の中で、リーダーシップとは文字通り「周囲を正しい方向にぐいぐい引っ張っていく人のこと」だと当然のように思い込んでいたのです。自分らしさとは正反対の方向に背伸びをしていた頃は、部下に対しても「そんなことではいけない」という厳しいメッセージばかりを伝えていました。 部下自身が本来どのような人で、どのような経験と能力を持つ人なのかをじっくりと見て、その人の力を発揮できる環境を整える、といった発想は当時の私には全くありませんでした。自分自身に対してそのように思えていないのですから、部下に対してもできるはずがありません。 しかし、ある時、自分自身にこう問いかけてみました。「そもそも自分は、ぐいぐい引っ張っていくようなタイプだっただろうか?」と。 この問いをきっかけに、自分自身への関わり方を変えたところ、部下への接し方も驚くほど変わりました。自らの特性を強みとして活かしたリーダーシップスタイルに切り替えたことで、部下から予想以上の支持を受け、信頼してついてきてくれるようになったのです。そうなると、私自身も自然体で無理なく仕事を進められるようになり、これまで常に感じていた「管理職の仕事は苦しくて辛いものだ」という感覚がいつの間にか消え去っていました。 ■管理職の無自覚な影響力 そう、管理職になりたての頃の私は「管理職ってなんて辛いんだ!」という思いで頭がいっぱいでした。それまでは、自分なりに経験を積んで成果を出せる自信も持っていたはずなのに、管理職になったとたん、チームのメンバーが驚くほど動いてくれません。人を通して成果を出すのが管理職の仕事なのに、どうしたら動いてくれるのかが全くわからず、暗中模索の状態でした。 当時の私は、「この辛さも仕事のうちだ、そのために給料をもらっているんだ」と自分に言い聞かせ、フラフラになりながら出社していました。しかし今振り返れば、そんな悲壮感もあらわに仕事をしている上司に、部下や周りの人たちが協力したいと思うはずがありません。管理職というものは、望むと望まざるとにかかわらず、その存在そのものがチームのメンバーに大きな影響を与えているものです。まず、この事実を頭だけでなく、実感することが大事なのだと思います。 人は誰でも、ただそこにいるだけで周囲になにかしらの影響を与えていて、ポジティブな感じを与える人もいれば、エネルギーを奪うような感じの人もいるでしょう。管理職は職場の空気を、まるでエアコンのように作り出します。機嫌が悪かったり、常に余裕がなくイライラしていたりすれば、その悪影響は職場全体に広がります。私自身、「辛さを我慢するのが仕事なんだ」という後ろ向きな仕事観を持っていたことで、知らないうちに部下たちのやる気を削いでしまっていたのだと気づきました。 一般社員のときよりも、管理職には組織から一定の「力」が与えられています。その力をいかに使うかで、管理職が作り出す職場の空気が変わるのです。自分がよい方向に変わればプラスの影響力が発揮され、周りの人々もよい方向に影響され始め、周囲からの支持が集まり、チーム力も高まっていく。自分の力を、人の力を引き出すために活かせるようになると、管理職という仕事の本当の面白さが見えてきます。 ■チームのベクトルを最大化する「良影響」の法則 管理職として自分らしく力を発揮するためには、力の持つ「大きさ」と「方向」を理解する必要があります。物理の授業で習ったベクトルの考え方と同じですね。管理職自身の力にも、そしてチームのメンバーひとり一人の力にも、それぞれ大きさだけでなく向きがあります。 もし管理職が、メンバーの力を引き出すために自分の持つ影響力を活かすことができれば、チーム全体のベクトルは劇的に大きくなるのです。管理職の仕事の醍醐味は、まさにこの「個々の力のベクトルを、より目的にかなう方向へと引き出し、最大化させていくこと」にあると言ってもよいでしょう。 私はこのことに気づくまでかなりの時間を要しましたが、試行錯誤の中から、影響力をプラスに活かすためには「しなやか姿勢」でいることが重要なのだという答えにたどり着きました。変化が激しく先が読みにくい現代においては、変化を肯定的に受け止める「しなやかさ」が不可欠です。 課題が明確だった時代なら、上から細かく指示を出すスタイルでも通用したかもしれません。しかし、変化に強い組織をつくることが求められる今、管理職に求められる役割も変わっています。多様な価値観を持つ人々の強みを、これまでとは異なる形で組み合わせ、相乗効果の中で新しい価値を生み出すことが求められているのです。 しなやかな姿勢でいれば、こうした変化にも柔軟に対応することができますので、部下が最も力を発揮できる独自の力を見つけ、それを引き出し、また別の力を持つ人と結びつけることもできます。それこそが、チーム全体へ「悪影響」ならぬ「良影響」を広げていき、ベクトルを最大化する「しなやか姿勢」の効果なのです。 ■変化を味方につける「しなやか姿勢」5つの原則 しかし、具体的にどのような姿勢で仕事に臨めば、周囲に「良影響」を与えられるのでしょうか。どんな環境や条件の中でも柔軟な思考を持ち、自らの特性を強みとして最大限に発揮して道を切り拓いていける「しなやか姿勢」を支えるのは、以下のような5つの原則です。 (1)起こったことを前向きに捉える 降りかかる問題は自分自身の経験値を高め、人としての幅を広げる絶好の機会です。一回り成長した自分に出会える喜びを想像し、起きたことを肯定的に受け止めてみましょう。 (2)他者との違いを価値、可能性と考える 人と比べて落ち込んだり不安になったりしたときは、「私は、私らしくやろう」と自分に言い聞かせてください。多様性の時代、自分の強みを活かして自分ならではの色を仕事に織り交ぜていくことは、むしろ大きな価値になります。 (3)まずは自分が今できることに全力で取り組む 環境への不満や孤独を感じることもありますが、今の環境でできることを全力で、あきらめずに取り組むことが、結果として会社全体がより良くなるための突破口になるはずです。 (4)やり方は変えても目的はぶらさない 社会や会社の状況に応じて、手段は臨機応変に、柔軟に変えていくべきです。もし迷いが生じたら、「何のためにやるのか」という原点に立ち返り、目的を再確認した上で、目標達成のための新しいアプローチを模索しましょう。 (5)人・仕事・未来の可能性を信じる 私はこの5つ目の原則を最も大事だと考えているのですが、それは自分の働く環境を自らの手で作り出すことにつながると確信しているからです。部下を信頼して仕事を託すことは時に勇気が必要ですが、部下以上に部下を信頼することで、想像以上に大きな力を引き出すことができるものです。 かつての私は、部下に細かく指示を出すことが影響力だと思い込んでいました。しかし、それでは部下が萎縮して「イエスマン」になっているだけで、成果は限定的でした。思い切って部下の可能性を信じ、意見を尊重するように態度を改めたところ、部下から「あなたのためにがんばります」と言ってもらえるようになり、目覚ましい成果が上がるようになったのです。 もちろん、自分に対しても可能性を信じることで、自分らしく管理職として力が発揮できるでしょう。不安を感じたとき、辛くて諦めそうになったときには、この5つの原則を思い出してもらえたらと思います。 細木聡子 株式会社リノパートナーズ 代表取締役/日工機材株式会社 顧問/中小企業診断士 【関連記事】 ■キャリアの棚卸しで独自の武器を見つける方法 (細木聡子 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63461042-20260905.html ■「ヒステリックな女性管理職」が生まれるにはワケがある (細木聡子 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63425361-20260820.html ■「あなたがいるとロクなことがない」50名のメンバーから総スカンの女性管理職が変われたある転機 (細木聡子 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/63386112-20260802.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 細木聡子 株式会社リノパートナーズ 代表取締役/日工機材株式会社 顧問/中小企業診断士 ![]() 人の可能性を引き出すには、組織の関わりも重要だと実感し、独自の「しなやかマネジメント(TM)」を体系化する。「人には無限の可能性がある」という信念のもと、全ての人が自分らしく安心して成長できる社会づくりのために尽力している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



