unnamed
「社員は優しくて職場体験も楽しかったです。でも、自分がこの会社で働く像がリアルに描けず、後追い連絡や早期選考の案内もテンプレみたいな文章で……。正直他社の選考に気持ちが傾きました。」

これは、夏のインターンシップを終えて、秋の選考へ進まなかった学生の声です。

夏のインターンシップには十分な学生が集まり、参加後の満足度アンケートも高評価だったにもかかわらず、「秋以降の早期選考に学生が応募してくれない」と頭を抱える採用担当者は少なくありません。

原因は、企業側が「体験の満足度=志望度の向上」と誤解していることにあります。

組織人事コンサルタントの視点から言えば、インターンシップの満足度はあくまで体験への評価であり、それにより志望度が高まるとは限りません。インターンシップを志望度形成の場とすることこそが、企業と就活生における関係の始まりなのです。

本記事では、なぜ満足度が高いのに早期選考に応募されないのか、その原因を掘り下げ、満足度を志望度へとつなげる接続のプロセスをどう設計すべきかを論じます。

■就職活動の早期化と、増す早期選考の重要性
人材サービス会社・学情の調査によると、28年卒採用において8割近い企業が早期化の傾向が強まると回答しており、選考開始時期は「3年生の10・11・12月」がトップ3という結果となりました(参考:28年卒採用の選考開始は「3年生の10・11・12月」がトップ3。内々定出し開始予定は「3年生の12月」が突出、半数近くが年内開始予定【企業調査】 株式会社学情 2026/08/18) 。

新卒採用の早期化が進むなか、夏のインターンシップは単なる業界や仕事体験の場にとどまらず、実質的な選考のスタートラインとしての意味合いがますます強くなっています。

他社に出遅れず、優秀な人材を早期に確保するためにも、夏のインターンシップでいかに志望度を高め、スムーズに早期選考へ接続できるかが、採用成功のカギを握っています。

■満足度の高さがその後の選考に繋がらないワケ
一般的には、「インターンシップの満足度が高ければ、その後の早期選考への応募につながる」と考えられがちです。もちろんこの考え方自体が間違っているわけではありません。しかし、アンケートで得られる“満足”とは、「楽しかった」「ためになった」「担当者が優しくてよくしてくれた」という体験への評価に過ぎないことも少なくありません。一方で“志望”とは、その会社で働く自分を具体的に描いたうえで抱く、未来への意思決定です。

この現象を例えて言えば、恋愛において、誰にでも優しい人が“いい人止まり”で終わるのと似ているかもしれません。どれだけ優しく誠意があるデートであっても、他の人とでもできそうな当たり障りのない話だけでは「いい人だけど、付き合うのは違うかな」で終わってしまうことでしょう。

それと同じで、参加者全員に対して一律の早期選考案内を送るだけでは、学生との関係性は深まりません。インターンシップ期間中、どれほど熱量をもってこまめに対話を重ねていても、終了後に届くのが参加者一律の機械的な案内なら、学生の熱量は一気に冷めてしまいます。

「結局、自分自身を見てくれていたわけではなく、母集団の1人に過ぎなかったのか…」 そう感じた瞬間、企業や採用担当者への親近感は「その他大勢の就活生に向けた営業トークだった」という落胆や諦めに変わります。せっかく送った早期選考の案内も、他の大量のメルマガに埋もれてしまうのです。

だからこそ、一律の案内で終わらせるのではなく、インターンシップ中の様子を踏まえた、採用担当者と学生一対一の「個別フィードバック面談」を挟むことが重要です。

近年は、学生だけが企業を評価しているわけではないことも特筆すべきことでしょう。インターンシップを終えた学生は、他社のインターンシップでの体験はもちろん、友人との情報交換、SNSやネットの体験談、親や先輩の意見など、あらゆる比較情報を集めます。そのうえで、企業の優先順位を決めていくのです。

アンケートで満足度が高かった学生であっても、より「働くリアルなイメージ」を描かせてくれた他社のインターンシップがあれば、あっさりとそちらに流れてしまうものです。

そのため、学生が「自分が働く姿」をリアルに想像できるよう、年齢の近い若手社員との1on1(リクルーター制度)を適切に配置する仕組みづくりは欠かせません。

■満足度アンケートの落とし穴
では、なぜ企業は「満足度=志望度」と誤解してしまうのでしょうか。理由は、満足度アンケートが手軽な成果指標として使われるからです。数字で結果が見えるため、担当者は安心し、それが志望度の向上とイコールだと思い込んでしまう。しかし、学生がその後も自社を選び続けるかどうかは、アンケートでは測れません。

もう一つ見落としてはならないのが、就活生側の心理です。 人生を左右する就職活動において、「早く1社から内定をもらいたい」「1社でも多く内定しておきたい」と考える学生が、アンケートで敢えて低い評価をつけるでしょうか。内定ゼロのリスクを避けるため、丁寧に対応して高評価をつけておくのが学生にとっては合理的な行動です。つまり、アンケートの高評価を真に受けて安心しているだけでは、本当の志望度は見えてきません。

「満足度が高かったからインターンシップは成功だ」と安易に結論づけず、満足度が高くても早期選考応募に結びつかないのであれば、その原因を追求し、インターンシップから早期選考への接続のプロセスを改善していくことが必要不可欠です。

早期選考の案内を一律で送れば学生が動くという幻想を捨て、「楽しかった」という体験で終わらせず、この会社で働く自分をリアルに想像させられるか。満足度アンケートの表面上の数字に惑わされず、学生との真の関係性を築くアプローチこそが、今企業に求められているのです。


河本英之 人材コンサルタント・シーズアンドグロース株式会社 代表取締役


【関連記事】
■内定辞退がピークを迎えるこの時期、企業は内定者を絶対に「放置」してはいけない。 (河本英之 人材コンサルタント)
https://sharescafe.net/63460056-20260904.html
■AIに代替される新入社員――新卒一括採用は終焉するのか(河本英之 人材コンサルタント)
https://sharescafe.net/63365143-20260724.html
■入社3か月で辞めたい新卒を「甘え」で切り捨てられない理由 (河本英之 人材コンサルタント)
https://sharescafe.net/63303530-20260628.html
■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/62674731-20250930.html
■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/61186482-20240125.html


■プロフィール 河本英之 人材コンサルタント・シーズアンドグロース株式会社 代表取締役
kawamoto
1981年広島県生まれ。高校中退後、大検を取得し2001年に上智大学経済学部に入学、2005年に卒業。新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、採用戦略や組織人事領域に従事。企業規模を問わず500社以上の採用・育成コンサルティングを担当し、社内MVPも獲得。
2010年7月、シーズアンドグロース株式会社を設立し、代表取締役に就任。自身の「人の可能性の大きさ」を実感した経験に基づき、これまで16業界600社以上の企業の採用・育成を支援を行い、マイナビEXPOでは講師として登壇。著書に『新卒採用の常識を変える カレッジ型イベント』(金風舎)など多数。

公式サイト:https://seeds-and-growth.co.jp/
Instagram:@seedsandgrowth_saiyo

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。